土地の評価!最初に土地の種類を決定!土地の種類で評価方法が違う!

不動産の評価
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相続税で土地を評価する場合、最初にやるべき工程がその土地の種類を決めることです。

建物の敷地なら「宅地」、用水を利用して耕作する土地なら「田」、耕作の方法によらないで竹木の生育する土地なら「山林」など土地にはいくつかの種類があります。

この種類のことを「地目」といいます。
相続税上は、下記9個の地目に区分されています。

(1)宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地
(2)田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
(3)畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
(4)山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
(5)原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
(6)牧場 家畜を放牧する土地
(7)池沼 かんがい用水でない水の貯留池
(8)鉱泉地 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地
(9)雑種地 以上のいずれにも該当しない土地
(注) 駐車場(宅地に該当するものを除きます。)、ゴルフ場、遊園地、運動場、鉄軌道等の用地は雑種地となります。

 

この記事では、土地を取得した場合の土地の種類の見極め方から評価方法までについてご説明します。

 

 

 

 

  1. 土地の評価をするための流れ
  2. 1.土地の地目が何であるかを判定
    1. 地目の判別方法
      1. 現況地目
      2. 課税地目(課税明細書、名寄帳、固定資産税評価証明書)
      3. 登記簿地目(登記簿・全部事項証明書)
    2.  確認資料
    3. 9つの地目の判定方法
      1. 1.宅地の種類と判定方法
      2. 2.農地(田、畑)の種類と判定方法
        1. (1) 家庭菜園として利用されている宅地の場合
        2. (2) 耕作放棄された農地の場合
        3. (3) 雑種地として利用されている場合
        4. (4) 農地を他人が利用していた場合
      3. 3.山林の種類と判定方法
      4. 4.原野の種類と判定方法
      5. 5.牧場の種類と判定方法
      6. 6.池沼地の種類と判定方法
      7. 7.鉱泉地の種類と判定方法
        1. 鉱泉地の制限
      8. 8.雑種地の種類と判定方法
  3. 2.土地が都市計画法のどの区域なのかを判断
    1. 都市計画区域とは
      1. 市街化区域
      2. 市街化調整区域
      3. 非線引き区域
    2. 準都市計画区域とは
    3. 都市計画区域外とは
  4. 3.土地の評価単位の確定
    1. 宅地の評価単位の例
      1.  物理的位置関係
      2. 所有者
      3.  権利関係
    2. 市街地農地等の評価単位
      1. (事例)市街地農地等
    3. 単純に地目で分けることができない例
      1. 例1:テニス合宿所
      2. 例2:ゴルフ練習場
      3. 例3:地目の異なる土地を一団として評価する場合
  5. 4.土地の評価金額の求め方
    1. 1.宅地の相続税評価額
    2. 2.農地(田、畑)の相続税評価額
      1. 2つの計算方式
        1. 倍率方式
        2. 宅地比準方式
        3. 市街地周辺農地
      2. 生産緑地の計算方式
        1. ① 課税時期(被相続人が亡くなった日)に市町村が買取りの申出できない生産緑地
        2. ②課税時期に市町村が買取りの申出が行われていた生産緑地、または買取申出ができる生産緑地
      3. 農地の計算例
        1. 純農地の計算例
        2. 生産緑地の計算例
      4. 貸し付けている場合
        1. 市民農園として貸し付けている場合
        2. 農地を他人に耕作させている場合
    3. 3.山林の相続税評価額
    4. 4.原野の相続税評価額
    5. 5.牧場の相続税評価額
    6. 6.池沼地の相続税評価額
    7. 7.鉱泉地の相続税評価額
        1. 倍率方式
        2. 鉱泉地特有の方式(鉱泉地の利用者が旅館、料理店等営業者)
        3. 鉱泉地特有の方式(住宅、別荘等の鉱泉地)
      1. 温泉権が設定されている場合
      2. 観覧用の鉱泉地
    8. 8.雑種地の相続税評価額
      1. 対象地が店舗等の建築が可能な幹線道路沿いや市街化区域との境界付近の場合
      2. 対象地の周囲が純農地、純山林、純原野の場合
      3. それ以外の土地
      4. 路線価地域に所在する場合の1㎡あたりの価額の求め方
      5. 比準地の1㎡あたりの価額の求め方
        1. 時点修正率
        2. 宅地の評価倍率
        3. 各種補正率
        4. 斟酌割合
      6. 雑種地を他人に賃貸借している場合
      7. 賃借権の目的となっている雑種地の評価
        1. 賃借権の評価
        2. 上記以外の賃借権
        3. 賃借権の目的となっている雑種地の評価
          1. ① 地上権に準ずる賃借権の目的となっている雑種地の評価
          2. ② ①以外の賃借権の目的となっている雑種地の評価
        4. 区分地上権の目的となっている雑種地の評価
        5. 区分地上権に準ずる地役権の目的となっている雑種地の評価
      8. 都市公園等として貸し付けられている雑種地の評価
  6. 5.特例の適用
    1. 小規模宅地等の特例
    2. 特定計画山林の特例
      1. 特定計画山林の特例の適用要件
    3. 農地の納税猶予特例
      1. 納税猶予される税額の計算
        1. 計算例
          1. 特例が適用されない場合(本来の税額)
          2. 特例が適用される場合
      2. 農地の納税猶予特例を受けるための要件
      3. 農地の納税猶予特例を受けるための手続き
      4. 農地の納税猶予特例の適用を受ける際の注意点
  7. まとめ
    1. いいね:

土地の評価をするための流れ

土地を評価する場合の一連の流れは、以下の通りとなります。

  1. 土地の地目が何であるかを判定
  2. 土地が都市計画法のどの区域なのかを判断
  3. 土地の評価単位の確定
  4. 土地の評価金額の求め方

 

 

 

1.土地の地目が何であるかを判定

相続税の土地評価においては、土地を①宅地、②田、③畑、④山林、⑤原野、⑥牧場、⑦池沼、⑧鉱泉地、⑨雑種地の9つの地目に区分し、それぞれの地目ごとに評価をします。

地目を間違えて評価してしまうと、後でペナルティがきますので、確実に地目を見極めましょう。

なお、地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則第68条及び第69条に準じて判定を行います。

No 不動産登記地目 相続税の地目 内容
1 農耕地で用水を利用して耕作する土地
2 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
3 宅地 宅地 建物の敷地及びその維持もしくは効用を果たすために必要な土地
4 学校用地 宅地・雑種地 校舎、附属施設の敷地及び運動場
5 鉄道用地 宅地・雑種地 鉄道の駅舎、附属施設及び線路の敷地
6 塩田 雑種地 海水を引き入れて塩を採取する土地
7 鉱泉地 鉱泉地 鉱泉(温泉を含む)の湧出口及びその維持に必要な土地
8 池沼 池沼 かんがい用水でない水の貯留池
9 山林 山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
10 牧場 牧場 家畜を放牧する土地
11 原野 原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
12 墓地 雑種地 人の遺体または遺骨を埋葬する土地
13 境内地 雑種地 境内に属する土地であって、宗教法人法3条2号及び3号に掲げる土地
(宗教法人の所有に属しないものを含む)
14 運河用地 雑種地 運河法12条1項1号または2号に掲げる土地
15 水道用地 雑種地 もっぱら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場または水道線路に要する土地
16 用悪水路 雑種地 かんがい用または悪水はいせつ用の水路
17 ため池 雑種地 耕地かんがい用の用水貯留池
18 雑種地 防水のために築造した堤防
19 井溝 雑種地 田畝または村落の間にある通水路
20 保安林 山林 森林法に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地
21 公衆用道路 雑種地 一般交通の用に供する道路(道路法による道路であるかどうかを問わない)
22 公園 雑種地 公衆の遊楽のために供する土地
23 雑種地 雑種地 以上のいずれにも該当しない土地
不動産登記事務取扱手続き準則に定める地目と相続税の土地評価における地目との関係

 

地目の判別方法

地目を判別するには、以下の方法があります。

地目により、相続税評価額の計算方法が異なるため、しっかり見極める必要があります。

現況地目

現況地目は現地調査により判断できる地目のため、実証性の高い地目です。ただし、公法上の規制や相続開始時点から地目の変更がある場合もあるため、各種資料と照合の上判定する必要があります。

例えば、登記簿の地目は農地(田又は畑)ですが、現況が次のような場合には以下の様に判断します。

例1:数年前から耕作しないで放置している土地

耕作していない土地が上記のような状態に該当すれば農地と判定しますが、長期間放置されていたため、雑草等が生育し、容易に農地に復元し得ないような状況にある場合には原野又は雑種地と判定することになります。

例2:砂利を入れて青空駐車場として利用している土地

駐車場の用に供している土地は、雑種地と判定することになります。

 

課税地目(課税明細書、名寄帳、固定資産税評価証明書)

市役所の職員等が3年に一度、実地調査を行い、その結果を踏まえて判定した地目となります。
地目判定の基礎資料として利用することができます。

 

登記簿地目(登記簿・全部事項証明書)

登記されている地目ですが、現況と一致しないことも多いため、信頼性に劣ります。

 

 確認資料

地目を調査することが可能な資料としては、以下の様なものがります。

  • 登記簿
  • 固定資産税課税台帳
  • 農地台帳
    農地として登録されている地目を確認することができます。転用許可が出ているかも同時に確認します。
  • 森林簿
    森林簿に登録されていない場合は原野や宅地として評価をする必要がある場合もあるため、現地調査を行う前に確認します。

 

9つの地目の判定方法

相続税において、その土地がどの地目となるかは、登記簿上に記載された地目(田、畑など)で判定できません。

地目は現況によって判定をします。

以下では、各地目の判定方法と、その相続税に対する評価方法を説明します。

1.宅地の種類と判定方法

宅地とは、現在建物が立っている土地、もしくは建物の敷地のために使われる土地のことを指します。

宅地建物取引業法においては、用途地域内にある土地は、道路や川など一定の例外を除き、すべて宅地となります。

不動産登記法において、土地には田や山林などの用途(地目)が決められています。そのため、住宅のような建物を建てる土地には、登記簿謄本に宅地と記載されている必要があります。

 

2.農地(田、畑)の種類と判定方法

農地の相続税について考える場合は、その土地が「農地」に該当するかどうかを判別する必要があります。

農地」とは、現在、農作物の栽培のために耕作されている土地、あるいは耕作されていなくても耕作しようと思えばいつでも耕作できる土地となります。

農地は以下の4つの区分+生産緑地に分類されています。

農地の区分 区分の意義
純農地 農業を推進するために定められた土地で今後も農業を継続していくことを前提とした農地
中間農地 市街地の近郊にあり、市街地化の傾向が著しい区域内にある農地のことで、将来、市街地化する恐れはあるが、すぐには他の用途に転用されないと考えられる農地
市街地周辺農地 市街地の周辺など、市街地化の傾向が著しい地域にある農地で、今後、他の用途に転用されることが見込まれる農地
具体的には、都市区画整備された区域内や駅・役場から300m以内の範囲にあり、宅地への転用が容易な農地
市街地農地 市街地区域内にある農地や、農地法上で転用許可を得ている農地で、「農地の転用」に対して、いつでも転用することができる、すでに転用の許可を受けた農地
生産緑地 良好な都市環境の形成を図るため、市街化区域内の農地を計画的に保全していく目的で、都市計画法に基づき、「生産緑地地区」に指定された市街化区域内の農地

※農地の区分を確認するには、市役所などのホームページを閲覧するか、市役所の農政企画課などの担当部署に照会して調べます。

 

(1) 家庭菜園として利用されている宅地の場合

家庭菜園として利用されている宅地は「宅地」として地目判定を行います。

 

(2) 耕作放棄された農地の場合

耕作放棄された農地であっても、以下の場合には、基本的には農地として判定をします。

  • 現在は耕作されていないが、耕作をしようとすればいつでも耕作できるような土地
  • 客観的に見てその現状が耕作の目的に供されるものと認められるような土地

ただし、容易に農地に復元し得ないような状況にある場合には、「原野」又は「雑種地」となります。

 

(3) 雑種地として利用されている場合

農地を「ソーラーパネル用地」や「駐車場用地」などの雑種地として利用されている場合には、農地への普及の可能性・難易度を勘案して、農地として評価するか否かを判定します。

例えば、農地の上に、単にソーラーパネルを設置しているような状況であれば、撤去は容易であり、耕作しようと思えばいつでも耕作できるような状態にあると客観的に見て取れる場合には、農地として地目判定をします。

逆に、農地へ砂利を入れて駐車場として利用しているような場合には、農地への復帰は困難なので、「雑種地」として評価します。

 

(4) 農地を他人が利用していた場合

農地を、他人に利用させていた場合には以下のような一定の条件があります。

  • 貸付する農地が10ヘクタール未満であること
  • 貸付期間が5年以内であること
  • 利用者は営利目的での栽培を行わないこと
  • 貸付は相当人数を対象として行うこと

また、基本的に賃貸借契約となるので、農地の利用者には賃料を支払う義務が生じます。

3.山林の種類と判定方法

山林には3つの種類があります。

ただし、山林は木々が成長して大きくなり登記簿上の面積と異なっている可能性もあるため、その場合は固定資産税評価額を実際の土地面積に基づき再計算した上で評価されることになります。

種類 説明
純山林 市街地から遠く離れたところにあって宅地の価額の影響を受けない山林
中間山林 市街地近郊にあって売買価格水準が純山林としての売買価格より高い水準にある山林
市街地山林 宅地の中や市街化区域内にある山林

 

4.原野の種類と判定方法

原野とは、木や草が生い茂っているにもかかわらず人の手が加えられておらず放置されたままの土地のことです。原野にもいくつか種類があり、それによって評価方法も異なります。

種類 説明
純原野 市街化調整区域内にあり、なおかつ「隣接して主要な公道が存在しない」「周囲が開発されておらず、該当する土地を開発することが容易ではない」等の条件にあてはまる土地のことを指します。
中間原野 都市計画法上の市街化調整区域(開発を制限し自然を保存する地域)などにあるものの、ある程度開発が進んでやや地価が高くなっている原野のことです。
市街地原野 市街化区域内に存在している原野のことを指します。

 

5.牧場の種類と判定方法

牧場とは、牧畜のために使用する建物の敷地,牧草栽培地及び林地等で牧場地域内にあるものは,すべて牧場となります。

種類  説明
純牧場 市街地から遠く離れたところにあって宅地の価額の影響を受けない牧場
中間牧場 市街地近郊にあって売買価格水準が純牧場としての売買価格より高い水準にある牧場
市街地の牧場 宅地の中や市街化区域内にある牧場

尚、森林内にある立木や果樹なども評価対象となります。
牧場の価額に、土地の肥え具合を数値化した「地味級」、森林の植栽密度である「立木度」などをかけて評価します。

 

6.池沼地の種類と判定方法

池沼地とは、かんがい用水以外の水を貯めた池・沼地をいいます。

かんがい用の水を貯めた池はため池となります。

土地は、原則として宅地や山林、原野や牧場など8つの地目(農地を田・畑と分ければ9つの地目)に分類されますが、池沼地はこの分類の1つです。

また、これ以外にも、地目は不動産登記事務取扱手続準則により墓地や境内地、堤、公園、学校用地など極めて細目された分類で認識されます。

種類 説明
純池沼地 市街化調整区域内にあり、なおかつ「隣接して主要な公道が存在しない」「周囲が開発されておらず、該当する土地を開発することが容易ではない」等の条件にあてはまる土地のことを指します。
中間池沼地 都市計画法上の市街化調整区域(開発を制限し自然を保存する地域)などにあるものの、ある程度開発が進んでやや地価が高くなっている池沼地のことです。
市街地池沼地 市街化区域内に存在している池沼地のことを指します。

 

7.鉱泉地の種類と判定方法

鉱泉地とは、鉱泉(温泉を含む)の湧出口とその維持に必要な土地を意味します。

例えば、温泉(鉱泉)の湧出口、湧き出した温泉水を一時溜めておく設備やその敷地、鉱泉を引くための導管や送湯管等も、湧き出し口の維持に必要な範囲で「鉱泉地」として取り扱います。

鉱泉地は人工的に作り出すことは事実上不可能ですので、特殊な地目であり、温泉地として観光地になっている土地など特殊な場所以外ではあまり存在しない土地ということができます。

また、その分、鉱泉地は温泉などの保養地として利用することができれば、非常に価値のある土地として活用することができます。

鉱泉地の制限

鉱泉地については、

  • 温泉の採取権などの権利の譲渡における条例等による制限
  • 旅館を経営されている場合には、経営者の方の役員変更登記や旅館業法による許可の変更手続きが必要

等、様々な法律上の問題が絡むことがあります。

また鉱泉地が使用できなくなった、もしくは既になっているといったケースでは、地目変更登記が必要となります。

 

8.雑種地の種類と判定方法

雑種地とは「その他諸々の雑多な土地」ということで宅地、農地、山林等の土地以外の土地という意味です。
代表例としては、駐車場や空き地のことを雑種地といいます。

雑種地とは、上述の1~7のいずれにも該当しない土地となります。

雑種地の地目の判定は消去法的に把握する必要があります。

雑種地については、細かな規定がありますが、主に以下の様な土地が該当します。

  • 駐車場
  • 私道
  • 資材置き場
  • ゴルフ場
  • 空き地
  • 公園
  • テニスコート
  • 野球場
  • バッティングセンター
  • ゴルフ練習場
  • 遊園地
  • 墓地、境内地

 

 

 

 

2.土地が都市計画法のどの区域なのかを判断

都市計画法とは、都市計画に必要な事項について定めている法律です。

都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため、土地利用や都市施設の整備、市街地の開発などに関するルールが設けられています。

いずれの地域に所在するかにより、その土地の評価単位や評価方法が異なってきます。

対象の土地が、いずれの地域に所在するのかを確認する方法は、対象地が所在する役所に聞くことです。

都市計画区域とは

都市計画区域とは、都市計画法という法律によって、都道府県知事や国土交通大臣が指定するエリアのことです。

  • 都市計画区域は、「市街化区域」と「市街化調整区域」「非線引き区域」に分けられる。
  • 都市計画区域の他には、「都市計画区域外」と「準都市計画区域」がある。

市街化区域

「市街化区域」とは、都市計画区域について、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときに定める区域区分のうち、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域のことです。

 

市街化調整区域

「市街化調整区域」とは、都市計画法により定められる区域区分のうち、市街化を抑制する区域のことです。

市街化を目的としていないため、原則として住宅や商業施設など建物を建てることができません。

そのため、市街化調整区域内での土地活用は難しいとされており、以下の用途で活用されています。

  1.  駐車場
  2. 太陽光発電
  3. 資材置き場
  4. 墓地・霊園
また、届けを提出し許可を得れば、以下に様な建物を建てて活用する方法はあります。
  • 高齢者施設
  • 社会福祉施設
  • 医療施設

 

非線引き区域

市街化区域と市街化調整区域とに区分されていない都市計画区域のことで、法律上の名称は「区域区分が定められていない都市計画区域」といいます

一つの都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域とに区分することを「区域区分」(または「線引き」)と呼ぶが、この「区域区分」がされていない都市計画区域が「区域区分が定められていない都市計画区域」です。

 

準都市計画区域とは

準都市計画区域とは、都市計画区域に指定する要件を満たしていない等の理由で都市計画区域外にある土地で、将来的に市街化が見込まれる区域の土地のことです。

将来的な利用をあらかじめ規制し、将来的に一体の都市として総合的に整備・開発・保全されることを目的として都道府県が指定する区域となります。

 

都市計画区域外とは

都市計画区域・準都市計画区域以外の区域」の事です。

建築基準法の集団規定と言って、建築物の敷地に対する隣地や道路との関係(高さ、建ぺい率、容積率など)、都市計画(用途地域など)が適用されない地域です。

 

 

 

 

3.土地の評価単位の確定

土地の評価単位は、基本的には原則「地目別」です。

【地目別の評価単位一覧】

地目 評価単位
宅地 利用の単位となっている1区画の宅地(=1画地の宅地)
田・畑(農地) 耕作の単位となっている1区画の田及び畑(農地)
山林 固定資産税の台帳に登録された、1筆の山林
原野 1筆の原野
牧場・池沼 原野に準ずる
鉱泉地 原則、1筆の鉱泉地
雑種地 利用の単位となっている一団の雑種地(同一の目的で使用されているもの)
土地登記簿においては、1個の土地を指す単位を筆(ふで)といい、1筆(いっぴつ)、2筆(にひつ)などと数えます。 登記所では、1筆ごとに登記が行われ、地番がつけられることになっています。 たとえば、土地所有者が1筆の土地を複数に分けて取引したい場合には、分筆登記を行うことになります。
ただし、地目によっては、それ以外の要素も加味して判定しなければなりません。

 

宅地の評価単位の例

例えば、宅地は、1画地の宅地、つまり利用の単位となっている1区画の宅地ごとに評価をします。

宅地は、1画地の宅地、つまり「利用の単位となっている1区画の宅地」ごとに評価をすることとなっています。

「利用の単位となっている1区画の宅地」とは、その宅地の取得者が単独で、自由に使用収益、処分することができる利用単位又は処分単位をいいます。

なお、宅地の評価単位を決定する前に、評価上の区分、つまり地目単位ごとに土地を区分するのが原則ですから、次のような土地は原則として別の評価単位となります。

地目別評価の原則(評価上の区分)

 物理的位置関係

物理的に離れている土地については、1つの利用の単位として利用することができませんので、原則として、別々の評価単位となります。

所有者

所有者ごとに、土地の利用用途や処分制限が異なるため、原則として相続又は遺贈により取得した取得者ごとに評価単位を分けます。

評価しようとする土地が共有となっている場合には、その共有地全体の価額に共有持分の割合を乗じて、各人の持分の価額を算出します。

 権利関係

権利関係が異なると土地の処分制限の程度も異なるため、次の単位ごとに評価をします。

  • 自用地
  • 借地権
  • 貸宅地(貸付先が異なるごと)
  • 貸家建付地(貸付先が異なるごと)

なお、使用貸借により貸付けられている土地については、その使用貸借権は存在しないものとして評価単位を決定します。つまり、使用貸借権が付着した土地は「自用地」として評価することとなります。

 

市街地農地及び市街地周辺農地(以下、市街地農地等という。)の評価単位は、「利用の単位となっている一団の農地」とされています。

具体的には、次のように判定します。

(1) 所有している農地を自ら使用している場合には、耕作の単位にかかわらず、その全体をその利用の単位となっている一団の農地とします。

(2) 所有している農地を自ら使用している場合において、その一部が生産緑地である場合には、生産緑地とそれ以外の部分をそれぞれ利用の単位となっている一団の農地とします。

(3) 所有する農地の一部について、永小作権又は耕作権を設定させ、他の部分を自ら使用している場合には、永小作権又は耕作権が設定されている部分と自ら使用している部分をそれぞれ利用の単位となっている一団の農地とします。

(4) 所有する農地を区分して複数の者に対して永小作権又は耕作権を設定させている場合には、同一人に貸し付けられている部分ごとに利用の単位となっている一団の農地とします。

 なお、市街地山林及び市街地原野の評価単位についても同様の考え方により判定します。

(事例)市街地農地等

(事例1)市街地農地等の図

市街地農地、市街地山林及び市街地原野(以下市街地農地等といいます。)の価額は、付近の宅地の価格形成要因の影響を受けるため、宅地比準方式により評価することとしています。

図のような市街地農地等について、1枚又は1筆ごとに評価することとすると、宅地の効用を果たさない規模や形状で評価することとなり、隣接宅地と同じような規模及び形状であるにもかかわらず、価額が異なることとなるため、利用の単位となっている一団の土地を評価単位とします。

なお、農地については、市街地農地のほか、市街地周辺農地及び生産緑地についてもそれぞれごとに「利用の単位となっている一団の農地」を判定します。

 

単純に地目で分けることができない例

例1:テニス合宿所

例えば、下記のような利用の単位が異なる一団の土地があったとします。

  • 標準的な宅地(合宿所)は宅地
  • テニスコートは雑種地
  • 資材置場は雑種地
  • 駐車場は雑種地

原則通りなら地目や利用目的が違うので、原則通り上記の4つで分けて、「合宿所」、「テニスコート」「資材置き場」「駐車場」評価します。

但し、市街化区域等に所在した場合には、4つの土地を一体として評価することが可能な場合があります。

雑種地の評価単位

(注) 贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われた場合において、例えば、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」とします。

この様な場合には、「ただし書き」例外を適用して「合宿所」の敷地としてテニスコートと駐車場を一体で評価します。

簡単に言うと2つ以上の地目であっても一体利用されていた場合には、原則の地目ごとの評価ではなく、2以上の地目を一体として評価することができるということです。

例2:ゴルフ練習場

建物の敷地となっている宅地と、その他の雑種地からなる次の図のようなゴルフ練習場があります。

地目の異なる土地が一体として利用されている場合の図

土地の価額は、原則として地目の別に評価しますが、2以上の地目からなる一団の土地が一体として利用されている場合には、その一団の土地はそのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価します。

したがって、図のように、A土地及びB土地の一団の土地がゴルフ練習場として一体利用されている場合には、その一部に建物があっても建物敷地以外の目的による土地(雑種地)の利用を主としていると認められることから、その全体が雑種地からなるものとして雑種地の評価方法に準じて評価することになります。

なお、駐車場の用に供されているC土地は、不特定多数の者の通行の用に供されている道路によりA土地及びB土地とは物理的に分離されていますから、これらの土地とは区分して評価します。

例3:地目の異なる土地を一団として評価する場合

市街化調整区域以外の都市計画区域で市街地的形態を形成する地域において、市街地農地、市街地山林、市街地原野及び宅地と状況が類似する雑種地のいずれか2以上の地目が隣接している場合で、全体を一団として評価することが合理的と認められる場合の具体例を以下に示します。

以下の事例14のような場合に、農地、山林及び雑種地の全体を一団として評価することが合理的と認められます。

なお、事例5のような場合はそれぞれを地目の別に評価します。

事例1から4の図

事例5の図

※(事例5)のように農地と山林をそれぞれ別としても、その形状、地積の大小、位置等からみても宅地の効用を果たすと認められる場合には、一団としては評価しません。

 

 

 

4.土地の評価金額の求め方

相続税の土地評価においては、原則、土地を①宅地、②田、③畑、④山林、⑤原野、⑥牧場、⑦池沼、⑧鉱泉地、⑨雑種地の9つの地目に区分し、それぞれの地目ごとに評価をします。

土地を評価する上で見落としがちな点として、基本的に倍率方式で計算する土地には個別事情を斟酌しなくてもよいとされていますが、地目によっては、倍率方式でも補正率を加味して土地の評価額を計算しなければならない場合があることです。

たとえば、地目が「山林」となっているのに、実際の土地は「雑種地」などの特殊な土地の場合は、「宅地比準方式」を利用することになります。

1㎡あたりの近傍宅地の価額が入った固定資産税評価証明書を取り寄せ、その価額をもとに計算します。

評価対象地の1㎡あたりの価額 =宅地である場合の固定資産税評価額 × 評価倍率 / 地積 × 補正率 (※) – 宅地造成費
※補正率:奥行価格調整率、奥行長大補正率、不整形地補正率などを必要に応じて乗じる

雑種地の評価額 =評価対象地の1㎡あたりの価額 × 雑種地の地積

上記の様に倍率方式であっても補正率を加味しないといけないことがあります。

 

以下では、各地目の相続税に対する評価方法を説明します。

 

1.宅地の相続税評価額

宅地とは、現在建物が立っている土地、もしくは建物の敷地のために使われる土地のことを指します。

宅地建物取引業法においては、用途地域内にある土地は、道路や川など一定の例外を除き、すべて宅地となります。

宅地の相続税の評価額の求め方は複雑なので、以下の記事で詳細をご説明しています。

 

2.農地(田、畑)の相続税評価額

農地の相続税について考える場合は、その土地が「農地」に該当するかどうかを判別する必要があります。

その農地の区分に応じて定められた評価方法により、相続税評価額の算定をおこないます。(農地法による区分ではなく、税法上の農地区分となります。)

市街地にある農地や広大な農地の場合、相続税評価額が高額となり、結果として相続税の負担が重くなることがあります。

農地は以下の4つの区分+生産緑地に分類されており、それぞれの区分に応じた評価方法が定められています。

【農地の評価額計算方法】

農地の区分 相続税評価額計算方法
純農地 「倍率方式」によって計算
中間農地 「倍率方式」によって計算
市街地周辺農地 評価額は、「市街地農地」で計算した評価額の80%に相当する金額
市街地農地 倍率方式か宅地比準方式のいずれかで評価をおこないます。
生産緑地 その土地が生産緑地でないものとして評価した価額から、一定割合の金額を控除した金額

2つの計算方式

農地の相続税評価額を求める方法に使われるのは、倍率方式と宅地比準方式の2つです。

 

倍率方式

倍率方式とは、国税庁が公開している倍率を、固定資産税評価額に乗じて計算する方式です。

固定資産税評価額は、以下いずれかの方法で確認できます。

  • 毎年春ごろに土地の所有者に届く固定資産税の納税通知書
  • 対象地が所在する役所や都税事務所にある固定資産課税台帳
  • 固定資産評価証明書を取り寄せる

倍率は、国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」から調べられます。

評価額 = 固定資産税評価額 × 国税庁が定めた倍率

 

宅地比準方式

「宅地比準方式」とは、その農地が宅地であるとした場合の1平米あたりの価額から、その農地を宅地に転用する場合にかかる1平米あたりの造成費を控除した金額に、農地の地積を乗じて計算します。

造成費とは、現在宅地ではない土地を宅地化する場合に発生する費用を指します。

1平米あたりの宅地造成費の金額は、都道府県ごとに国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。

【宅地比準方式】
評価額 = (宅地とみなした場合の1㎡あたりの価額 – 1㎡あたりの造成費用の額)×土地の面積

 

市街地周辺農地

以下の計算式で求めます。

評価額 = 市街地農地 × 0.8

 

生産緑地の計算方式

生産緑地には、「買取りの申し出」制度が設けられています。生産緑地に指定されてから30年の経過以後、または、農林漁業の主たる従事者が死亡した場合などには、生産緑地の所有者は、市町村長に対してその生産緑地を「時価」で買い取ってもらうことを申し出ることができるという制度です。

生産緑地の相続税評価額は、市町村が買取の申し出ができるかできないかによって、異なります。

評価額 = その土地が生産緑地でないものとして評価した価額 × {1-(①または②の割合)}

① 課税時期(被相続人が亡くなった日)に市町村が買取りの申出できない生産緑地
課税時期から買取申出ができる日までの期間 割合
5年以下のもの 0.1
5年を超え10年以下のもの 0.15
10年を超え15年以下のもの 0.2
15年を超え20年以下のもの 0.25
20年を超え25年以下のもの 0.3
25年を超え30年以下のもの 0.35
②課税時期に市町村が買取りの申出が行われていた生産緑地、または買取申出ができる生産緑地

割合 = 0.05

 

農地の計算例

純農地の計算例

純農地に該当する土地を仮定して計算してみます。固定資産税評価額を500万円、倍率を30と考えます。

純農地とした場合の相続税評価額=500万円 × 30=1億5,000万円

生産緑地の計算例

課税時期に市町村が買取りの申出できない生産緑地で、課税時期から買取申出ができる日までの期間を5年以下とした場合で計算します。

相続税評価額=1億5,000万円 × (1-0.1)=1億3,500万円

つまり、生産緑地の相続税評価額は1億3,500万円です。

 

貸し付けている場合

市民農園として貸し付けている場合

市民農園として貸付を行っている農地は、生産緑地としての利用制限と賃貸借契約の期間制限とを考慮して評価額を決定します。

生産緑地に指定されると宅地利用などが制限されるため、評価額は通常の農地などの65%となります。

また、賃貸借契約の期間制限については、賃借権の残りの期間に応じて法定地上権割合の半分に当たる割合を引いて決定されます。

 

農地を他人に耕作させている場合

被相続人が農地を所有していても、自身は農地として利用せず、他人に耕作させている場合、契約により相続税の評価方法は異なります。

農地法上、以下のいずれかが当該農地に設定されている場合は、自由に用途を変えたり売ったりすることはできません。

  • 「耕作権」
  • 「永小作権」
  • 「区分地上権」
  • 「区分地上権に準ずる地役権」

評価する際は、まず当該農地を自用地として評価し、そこから権利の種類や存続期間、農地の評価区分による所定の割合を控除して評価額を算出します。

なお、農地法上の権利が設定されていない場合は、「自用地」として評価されるにとどまります。権利を設定しているときのような控除は受けられない点に注意が必要です。

 

 

3.山林の相続税評価額

山林は木々が成長して大きくなり登記簿上の面積と異なっている可能性もあるため、その場合は固定資産税評価額を実際の土地面積に基づき再計算した上で評価されることになります。

尚、山林の地積は、傾斜面積ではなく水平面積をその山林の地積とします。

種類 相続税評価額計算方法
純山林 倍率方式により評価額を算出
中間山林 倍率方式により評価額を算出
市街地山林 宅地比準方式または倍率方式で算出

※倍率方式や宅地比準方式の計算方法は農地と同じです。

4.原野の相続税評価額

原野の種類によって評価方法も異なります。

種類 相続税評価額計算方法
純原野 倍率方式により評価額を算出
中間原野 倍率方式により評価額を算出
市街地原野 宅地比準方式もしくは倍率方式で算出

※倍率方式や宅地比準方式の計算方法は農地と同じです。

5.牧場の相続税評価額

牧場や牧場に設定された賃借権や区分地上権等についての相続税評価には、原則として原野に関する相続税評価方法が準用されます。

種類 相続税評価額計算方法
純牧場 倍率方式により評価額を算出
中間牧場 倍率方式により評価額を算出
市街地の牧場 宅地比準方式または倍率方式で算出

※倍率方式や宅地比準方式の計算方法は農地と同じです。

尚、森林内にある立木や果樹なども評価対象となります。
牧場の価額に、土地の肥え具合を数値化した「地味級」、森林の植栽密度である「立木度」などをかけて評価します。

 

6.池沼地の相続税評価額

池沼地は不動産ですので当然相続の対象となり、相続税の評価方法が問題となります。

種類 相続税評価額計算方法
純池沼地 倍率方式により評価額を算出
中間池沼地 倍率方式により評価額を算出
市街地池沼地 土地の評価額は宅地比準方式で算出

※倍率方式や宅地比準方式の計算方法は農地と同じです。

池沼地は景観が豊かな土地もありますので主観的な価値は高いものもありますが、賃貸をすることがあまり期待することができないなど経済的には負担となる可能性があります。

そのため池沼地を保有されている場合には最終的には物納の可能性も視野に入れて相続税対策を考えられることがひとつの方法として考えることができます。

地目を変更する場合には土地家屋調査士に依頼することにより地目変更登記を申請することができます。

 

7.鉱泉地の相続税評価額

鉱泉地は通常の土地と比較して特殊な評価方法により評価することとなります。

倍率方式

評価額 = 固定資産税評価額 × 国税庁が定めた倍率

 

鉱泉地特有の方式(鉱泉地の利用者が旅館、料理店等営業者)

評価額 = 固定資産税評価額x「その鉱泉地の鉱泉を利用する宅地の課税時期における価額÷その鉱泉地の固定資産税評価額の評定の基準となった日における価額」

尚、固定資産税評価額の評定の基準となった日:通常、各基準年度の初日の属する年の前年1月1日とします。

ただし、湯温、湧出量等に急激な変化が生じたなどのケース時には、その鉱泉地と状況の類似する鉱泉地の価額若しくは売買実例価額又は精通者意見価格等を参酌して求めた金額によって評価することとなります。

 

鉱泉地特有の方式(住宅、別荘等の鉱泉地)

当該鉱泉地の評価額 = 鉱泉地本来の評価額 x (1-30/100以内の数値)

 

温泉権が設定されている場合

当該鉱泉地に温泉権が設定されている場合は、「鉱泉地の評価」または「住宅、別荘等の鉱泉地の評価」の定めにより評価した価額から、定めにより評価した温泉権の価額を控除した価額によって評価します。

 

観覧用の鉱泉地

観覧用の鉱泉地に関しては、その鉱泉地の固定資産税評価額を時点修正する方法等で評価することとなっています。

 

 

 

 

8.雑種地の相続税評価額

雑種地には決まった評価方法がありません。

その雑種地と状況が類似する付近の土地の評価方法を真似して評価します。この真似することを税務上は「比準する」といいます。

雑種地の評価で一番難易度が高いのが市街化調整区域に所在する場合です。
難易度が高い理由が下記の論点があるためです。

■比準土地に何を選択すればよいのか迷う
■宅地比準とした場合の斟酌(しんしゃく)割合をどれにすればよいのか迷う

以下で詳しく説明します。

 

対象地が店舗等の建築が可能な幹線道路沿いや市街化区域との境界付近の場合

宅地比準方式を使用します。

宅地比準方式については、「2.農地(田、畑)の相続税評価額」でも説明していますが、以下の式で計算します。

【宅地比準方式】
評価額 = (宅地とみなした場合の1㎡あたりの価額 – 1㎡あたりの造成費用の額)×土地の面積

 

 

対象地の周囲が純農地、純山林、純原野の場合

都市計画図、航空写真、国税庁の倍率表等で対象地の周辺の土地の状況を確認し、ある程度容易に判定ができると思います。

農地比準、山林比準、原野比準方式を使用します。

【農地比準方式(山林比準、原野比準方式)】
評価額 = (純農地とみなした場合の1㎡あたりの価額 + 1㎡あたりの造成費用の額)×土地の面積

※注意点としては、農地・山林・原野比準の場合は造成費を加算(プラス)し、宅地比準の場合は造成費を控除(マイナス)するということです。

 

それ以外の土地

個別判定をします。

下記のような事項を総合的に勘案して比準土地を選定します。

  • 対象地の周囲の状況
  • 雑種地になる前の地目(登記簿謄本で確認します)
  • 農地転用の有無
  • 50戸連たん状況
  • 固定資産税評価額の算定根拠

 

路線価地域に所在する場合の1㎡あたりの価額の求め方

路線価方式で宅地を評価するのと同じ方法で評価すれば大丈夫です。

路線価方式の評価については以下の記事を参照して下さい。

宅地の評価と唯一違う部分は、雑種地の内容に応じて宅地造成費を控除できる可能性がある点です。
宅地造成費は、都道府県別に毎年定められます。

ただし、アスファルト舗装や砂利敷がされている駐車場などは宅地造成の必要がないと判断されて宅地造成費は控除できないことがほとんどでしょう。

市街化区域に所在する雑種地で宅地造成費が控除できるケースは、未利用地で凸凹の土地であるなど限定的であるとお考えください。

 

比準地の1㎡あたりの価額の求め方

尚、宅地比準方式の「1㎡あたりの価額」は、以下の様に求めます。

1㎡あたりの価額 = 比準地の1㎡当たりの固定資産税評価額✕時点修正率✕宅地の評価倍率✕各種補正率✕(1-斟酌割合)

時点修正率

固定資産税評価額は3年に一度しか見直されませんが、地価が下落した場合のみ時点修正を認めています。

具体的には各年の1/1~7/1までの間に標準宅地等の価額が下落した場合にその年の固定資産税評価額を減額できるのです。

時点修正率は、全国地価マップで確認ができます。対象地の前面の路線価をクリックすると下記のように左側に時点修正率が表示されます。

 

宅地の評価倍率

市街化区域に所在する雑種地は宅地比準価額方式で計算することがほとんどです。

倍率は、都道府県ごとに国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」から求められません。

「雑種地の固定資産税評価額=宅地の固定資産税評価額」という算式が成立しないのでこの方法は使用できません。

以下の様にして確認します。

  • 固定資産税評価証明書等の備考欄にその価額を記載してもらう
  • 全国地価マップにて対象地の前面の固定資産税路線価を確認する
各種補正率

必要な場合には、以下の様な補正をします。

  1. かげ地割合の算定
  2. 不整形補正率の確認

これらの補正に対する詳細は以下の記事をお読み下さい。

 

斟酌割合

「斟酌割合」は、以下の様に判定します。

農地の区分 比順方式 斟酌割合
純農地(純山林、純原野) 農地比準、山林比準、原野比準方式 使用しない
中間農地 農地比準、山林比準、原野比準方式 使用しない
宅地比準方式 50%
市街地周辺農地 宅地比準方式 30%
市街地農地 宅地比準方式 0%

尚、この判定の「斟酌割合」は微妙で、通達とかでガッツリ判定方法が決められていないので役所調査や現地調査で判断するしかないので、役所に確認するようにして下さい・

雑種地を他人に賃貸借している場合

雑種地を他人に賃貸借している場合には一定減額が可能です。

貸し付けられている雑種地の主な具体例は下記のような土地です。

  • 資材置き場
  • 時間貸駐車場
  • 立体駐車場
  • ゴルフ場
  • ゴルフ練習場
  • 高圧線下の駐車場
  • テニスコート
  • 学校の校庭
  • 公園
  • 自動車教習所
  • 中古車展示場
  • バッティングセンター

上記のような土地でも土地所有者自身が使っていたらもちろん貸し付けられている雑種地には該当しません。

また、他者に貸していたとしても無償又は固定資産税相当で貸していた場合(すなわち、使用貸借の場合)には、貸し付けられている雑種地には該当しません。

さらに、他者に有償で賃貸していたとしても建物の敷地の場合には貸宅地又は貸家建付地となり、宅地の評価となりますので雑種地には該当しません。

すなわち、他者に賃貸借している場合で、かつ、建物以外の建築物の敷地が「貸し付けられている雑種地」に該当します。

上記を整理すると下記の通りです。

貸借方法 土地の上の建築物 評価方法
使用貸借 建物(所有者問わず) 自用宅地評価
賃貸借 土地所有者の建物 貸家建付地評価
賃貸借 他者の建物 貸宅地評価
使用貸借 構築物(所有者問わず) 自用雑種地評価
賃貸借 土地所有者の構築物 貸し付けられている雑種地評価
賃貸借 他者の構築物 貸し付けられている雑種地評価
使用貸借 建築物なし 自用雑種地評価
賃貸借 建築物なし 貸し付けられている雑種地評価

 

賃借権の目的となっている雑種地の評価

賃借権とは、賃貸借契約によって得られる借主の権利をいいます。民法上の債権です。

賃借権の目的となっている雑種地の評価は、まず、賃借権の評価をしなければなりません。

賃借権の評価

【評価方法】

地上権に準ずる賃借権は下記算式により評価します。

自用地評価額 ✕ 「法定地上権割合」又は「借地権割合」のいずれか低い割合

法定地上権割合とは相続税法第23条に規定されている下記の割合です。

法定地上権割合

上記以外の賃借権

地上権に準ずる賃借権に該当しない賃借権ですので弱めの賃借権とご理解ください。

【評価方法】

上記以外の賃借権は下記算式により評価します。

自用地評価額 ✕ 「法定地上権割合」 ✕ 1/2

 

賃借権の目的となっている雑種地の評価

賃借権の評価方法がわかれば、やっと本題の賃借権の目的となっている雑種地の評価について確認していきましょう。

自用地としての雑種地の評価額から上記の賃借権の評価額を控除すれば終わりでしょ?
と思われるかもしれませんが、ちょっとひとクセあるので下記をご参照ください。

① 地上権に準ずる賃借権の目的となっている雑種地の評価

地上権に準ずる賃借権の目的となっている雑種地の評価は、下記のいずれか低い価額により評価します。

■自用地評価額 ✕ ( 1 - 「法定地上権割合」又は「借地権割合」のいずれか低い割合 )
■自用地評価 ✕ ( 1 - 残存期間に応ずる割合 )

残存期間に応ずる割合とは下記の割合です。

残存期間に応ずる割合

採用すべき割合がいずれか高い割合となっているのは、控除する金額が大きくなる方が雑種地の評価額が小さくなるためです。

 

② ①以外の賃借権の目的となっている雑種地の評価

①以外の賃借権の目的となっている雑種地の評価、下記のいずれか低い価額により評価します。

■自用地評価額 ✕ ( 1 - 「法定地上権割合」 ✕ 1/2  )
■自用地評価 ✕ ( 1 - 残存期間に応ずる割合 ✕ 1/2 )

①の1/2です。

 

 

区分地上権の目的となっている雑種地の評価

区分地上権の目的となっている雑種地とは、土地の地下に高速道路や地下鉄等の地下トンネル等があることにより建物の階数等に制限がある土地をいいます。
区分地上権の目的となっている雑種地は、下記算式により評価します。

自用地評価額 - 「土地利用制限率」又は「自用地評価額✕30%」のいずれか大きい金額

なお、土地利用制限率とは、公共用地の取得に伴う損失補償基準細則(昭和38年3月7日用地対策連絡協議会理事会決定)別記2≪土地利用制限率算定要領≫に定める土地利用制限率をいいます。

 

区分地上権に準ずる地役権の目的となっている雑種地の評価

区分地上権に準ずる地役権の目的となっている雑種地で実務上一番頻繁に登場するのは、高圧線下の雑種地です。

区分地上権に準ずる地役権の目的となっている雑種地は、下記の区分に応じて下記の算式により評価します。

①家屋の建築が全くできない場合
自用地評価額 - 承役地の自用地評価額 ✕ 「50%」又は「借地権割合」のいずれか大きい金額
②家屋の構造、用途等に制限を受ける場合
自用地評価額 - 承役地の自用地評価額 ✕ 「30%」

 

都市公園等として貸し付けられている雑種地の評価

都市公園等の用地として貸し付けられている雑種地については一定の減額が可能となります。
減額するための主な要件は下記の通りです。

  1. 貸付けの期間が20年以上であること
  2. 正当な事由がない限り貸付けを更新すること
  3. 土地所有者は、貸付けの期間の中途において正当な事由がない限り土地の返還を求めることはできないこと
  4. 相続税の申告期限までに、その土地についての権原を有することとなった相続人全員から当該土地を引き続き公園用地として貸し付けることに同意する旨の申出書が提出されていること

より詳細な要件や減額割合は下記の表のリンク先の国税庁HPをご参照ください。

5.特例の適用

土地に関する特例について以下に紹介します。

地目によりかなり限定されています。

 

小規模宅地等の特例

宅地で良く利用される「小規模宅地等の特例」ですが、雑種地においても利用することが可能です。

宅地と雑種地以外の他の地目では利用できません。

小規模宅地等の特例が適用できる土地は建物又は構築物の敷地ですので雑種地の場合には構築物の敷地に該当すれば適用が可能です。

駐車場などはアスファルト舗装がされていれば小規模宅地等の特例の適用は可能です。

砂利敷きは一応構築物に該当しますが、過去の判例ではほとんどのケースで構築物に該当しないと判断されています。

小規模宅地等の特例についての詳細は、以下の記事で紹介しています。

 

特定計画山林の特例

特定計画山林の特例とは、特定計画山林相続人等が相続等で取得した特定計画山林について、相続税の課税価格を減額するものです。

特定計画山林の特例の対象となった山林については、その山林の相続税評価額に100分の95を乗じて課税価格に加えます。

当初より少ない金額で相続税の計算を行うため、相続税の負担を軽減する効果がある特例です。

特定計画山林の特例の適用要件

特定計画山林の特例の適用を受けるためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。

定められた要件を1つでも満たすことができないと、適用は受けられません。

満たさなければならない要件は、以下のすべてです。

  • 山林が特定計画山林に該当する
  • 特定計画山林相続人等が相続等により取得する
  • 相続税の申告期限まで特定計画山林相続人等が引き続きその山林を保有している
特定計画山林とは、「特定森林経営計画対象山林」または「特定受贈森林経営計画対象山林」のことです。
いずれも、森林法による市町村長の認定を受けた森林経営計画が定められている区域内にある立木または土地をいいます。
・特定森林経営計画対象山林は、被相続人が相続開始直前に所有していた山林
・特定受贈森林経営計画対象山林は、被相続人から相続時精算課税制度により贈与された山林
特定計画山林相続人等とは、森林経営計画に基づいて事業を行っている相続人のことです。

農地の納税猶予特例

「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」(農地の納税猶予特例)とは、遺贈により農地等(農地、採草放牧地および準農地)を取得して、その土地で引き続き農業がおこなわれる場合には、一定の要件のもとに、本来の相続税額のうち「農業投資価格」を超える部分に対応する相続税の納税が猶予されるという制度です。

さらに、納税猶予を受けていた相続人が死亡した場合等には猶予税額が免除されます。

 

納税猶予される税額の計算

農地の納税猶予特例によって納税猶予される相続税額は、以下の算式で計算されます。

納税猶予される相続税額 = 農地を通常の計算方法で計算した場合の相続税額-農地を農業投資価格により評価した場合の相続税額
「農業投資価格」とは、恒久的に農業に使用される土地が取引されるとした場合に通常成立すると認められる価格として、国税庁が決定した価格のことで、都道府県ごと、農地の種類ごとに、10アール(1,000平米)あたり20万円~90万円程度と定められています。
例えば、東京都で「畑」の場合は、10アール(1,000平米)あたり84万円となっています。
計算例

仮に、農地を通常の計算方法で計算した場合の1平米の評価額が10万円だとすると、1,000平米では1億円になります。

特例が適用されない場合(本来の税額)

農地の評価額1億円で計算された相続税額になる。

特例が適用される場合

「農地の評価額1億円で計算された相続税額-評価額84万円で計算された相続税額」の部分が、納税猶予される。
→評価額84万円で計算された相続税額になる。

上記の例をざっくりいうと、「1億円」の相続税評価額が「84万円」になるので、99%以上も評価額が減額されるという大きな効果をもたらします。

 

農地の納税猶予特例を受けるための要件

農地の納税猶予の適用を受けるためには、①被相続人、②相続人、③農地、の3種類に関して、それぞれ詳細に定められた要件を満たしている必要があります。以下、それぞれの要件を確認します。

要件 適用要件
被相続人
  • 死亡の日まで農業を営んでいた。
  • 死亡の日まで特定貸付け等をおこなっていた。
  • 死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人で、障害、疾病などの理由により自身で農業を続けることが困難になったため、賃借権等の設定による貸付けをし、税務署に届出をおこなった。
  • 農地等の生前一括贈与による納税猶予の適用を受けた人が亡くなった。
相続人
  • 相続税申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営をおこなう人
  • 相続税の申告期限までに特定貸付け等をおこなった人
  • 農地等の生前一括贈与による納税猶予の適用を受けた受贈者
特例農地等
  • 被相続人が農業の用に供していた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
  • 被相続人が特定貸付け等をおこなっていた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
  • 農地等の生前一括贈与による納税猶予の適用を受けた農地
「特定貸付け等」とは、市街化区域外の農地や採草牧草地について、農業経営基盤強化促進法などの法律に基づいておこなう農地中間管理事業または利用権設定等促進事業による貸付け、および生産緑地地区内の農地を対象とする認定農地貸付けまたは農園用地貸付けをいいます。

「特例農地等」とは、農地の納税猶予特例が適用される農地のことです。

 

農地の納税猶予特例を受けるための手続き

農地の納税猶予特例の適用を受けるためには、特定の手続きが必要となります。なお、手続きは相続時の1回限りではなく、3年ごとに手続きをしなければなりません。

  • 農業委員会から「相続税の納税猶予に関する適格者証明書」の交付を受ける
  • 相続税の申告手続きとあわせて必要書類提出、担保提供をする
  • 継続届出書を3年ごとに提出する

 

農地の納税猶予特例の適用を受ける際の注意点

農地の納税猶予特例は、あくまで納税義務が「猶予」(先延ばし)されているだけであり、納税が「免除」されるわけではありません。

納税猶予と免除の違いや、納税猶予が取り消される条件を理解しておきましょう。

また、一定の条件に該当すると、猶予されていた税額は免除となります。どのような場合に免除となるのかも確認しましょう。

 

 

 

まとめ

土地の評価額を求めるには、

  • 地目が何であるかを確定する
  • 都市計画法のどの区域かを確認する
  • 土地の評価単位を確認する

以上の内容を踏まえた上で、地目別に計算してく必要があることが、理解できたかと思います。

しかしながら、土地の評価は非常に複雑であり、解釈の仕方によっては、プロの税理士でも評価額が上がったり、下がったりしてしまいます。

このため、相続を専門に扱っている税理士に相談するのが良いかと思います。

以下の記事にて相続の税理士を紹介していますので、是非ご参照下さい。

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