遺言書で良く使う文例集

ここからは個別のケースごとの文例を使って、遺言書の書き方を確認していきましょう。

妻に全財産を相続させたい

1.妻藤沢花子に次の財産を含む全財産を相続させる。
(1)土地
所在   神奈川県藤沢市〇町〇丁目
地番   〇番〇
地目   宅地
地積   123.00㎡

(2)家屋
所在   神奈川県藤沢市〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種類   居宅
構造   木造瓦葺2階建
床面積  1階 100㎡
2階 50㎡
(3)遺言者名義の次の預貯金
①〇〇銀行〇〇支店普通預金#〇〇〇〇
②ゆうちょ銀行通常預金#〇〇〇〇


ポイント

  • 冒頭の記載は、単に「遺言者の全財産」と記載することもできますが、不動産や預貯金などの名義変更が必要な財産については、明細を記載しておくと相続人の手間が軽減されます。
    不動産は登記事項証明書のとおりに記載します。
  • 子どもがいる場合には、子供の遺留分が問題になります。
    子どもには相続財産全体の4分の1の遺留分がありますので、子どもが遺留分の請求をした場合、妻は金銭で支払う必要があります。
    相続財産の中に支払いに充当可能な財産が無ければ、妻自身の預金で支払ったり、相続した自宅などの不動産を売却して支払わなければならないこともあり得ます。
  • 子どもの遺留分を侵害しない範囲で渡すことも検討するようにしましょう。

 

子の相続分に差をつけたい

1.各相続人の相続分を次のように指定する。

妻藤沢花子  2分の1
長男藤沢一郎 8分の3
二男藤沢二郎 8分の1

なお、長男藤沢一郎の相続分が法定相続分より多いのは、一郎がこれまで遺言者夫婦と同居し、面倒を見てくれたことと、今後も妻花子の面倒を見てもらうからである。


ポイント

  • 遺言の条文の中に理由を記載することも可能です。理由がわかれば納得をしやすいものです。

 

妻に自宅の共有持ち分を相続させたい

1.妻藤沢花子に次の財産を相続させる。
(1)土地
所在   神奈川県藤沢市〇町〇丁目
地番   〇番〇
地目   宅地
地積   123.00㎡
持分   2分の1

(2)家屋
所在   神奈川県藤沢市〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種類   居宅
構造   木造瓦葺2階建
床面積  1階 100㎡
2階 50㎡
持分   2分の1


ポイント

  • 夫婦の共有名義になっているご自宅に引き続き妻を住まわせたい場合には、遺言をのこすと良いでしょう。
    遺言が無い場合は分割対象になってしまい、住み続けることが出来なくなってしまう可能性があります。
  • 妻が単独で登記申請できるように「相続させる」と記載します。「遺贈する」の場合、相続人全員で登記申請をする必要があります。

 

マンションの一室の相続

1.妻藤沢花子に次の財産を相続させる。
<一棟の建物の表示>
所在     神奈川県藤沢市〇町〇丁目〇番地〇
建物の名称  藤沢マンション
<専有部分の建物の表示>
家屋番号   〇番〇
建物の名称  〇〇号
種類     居宅
構造     鉄骨鉄筋コンクリート造1階建
床面積    1階 50.00㎡
<敷地権の表示>
土地の符号  1
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 〇〇分の〇〇


ポイント

  • 区分所有マンションの場合は、一棟の建物、専有部分の建物、敷地権の3項目を登記事項証明書どおりに記載します。

 

預貯金の相続

1.妻藤沢花子に次の財産を相続させる。
(1)遺言者名義の次の預貯金
①〇〇銀行〇〇支店普通預金#〇〇〇〇
②ゆうちょ銀行通常預金#〇〇〇〇のうち100万円


ポイント

  • 預貯金を渡す場合は、口座が特定できるように記載します。
  • 一部を相続させる場合は、金額を明記します。

 

株や国債などの有価証券の相続

1.遺言者名義の次の株式を長男藤沢一郎に1,000株、二男藤沢二郎に1,000株を相続させる。

〇〇証券〇〇支店 株式会社〇〇 2,000株

2.遺言者名義の次の財産を妻藤沢花子に相続させる。

(1)〇〇証券〇〇支店 10年利付国債
令和〇年〇月〇日発行 額面100万円

(2)〇〇証券〇〇支店 投資信託〇〇ファンド
償還日20〇〇年〇月〇日 100万口


ポイント

  • 株式を相続させる場合は、会社名、株数、預託先を明記しましょう。
    分割して相続させる場合は、相続人ごとの株数も明記します。
  • 株式以外の国債や投資信託といった有価証券を相続させる場合も同様に、「種類、発行日、償還日、額面、口数、預託先」などの財産を特定できる情報を記載しましょう。

 

長男に会社や店を継がせる

1.長男藤沢一郎に次の財産を相続させる。
(1)遺言者名義の藤沢〇〇株式会社の株式のすべて

(2)藤沢〇〇株式会社が使用する次の土地および建物
①土地
所在   神奈川県藤沢市〇町〇丁目
地番   〇番〇
地目   宅地
地積   123.00㎡

②家屋
所在   神奈川県藤沢市〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種類   居宅
構造   木造瓦葺2階建
床面積  1階 100㎡
2階 50㎡


ポイント

  • 遺言者がオーナー経営者である株式会社を子に継がせるためには、会社の株式を相続させます。
  • 会社所有ではなく、遺言者個人が所有していた事業用資産(不動産、特許権など)も会社経営に必要ですので経営を引き継ぐ相続人に相続させます。

 

長男に墓や仏壇を継がせたい

1.遺言者は藤沢家の祭祀承継者を長男藤沢一郎に指定し、〇〇墓地の永代使用権、墓石、仏壇など祭祀に必要な一切の財産を長男藤沢一郎に相続させる。


ポイント

  • 先祖代々の墓地、墓石、仏壇などを祭祀財産といい、これを受け継ぐ人を祭祀承継者といいます。祭祀主宰者ともいいます。
  • 祭祀承継者の指定は法的に遺言で効力を持たせることができることの一つです。

 

 

 

 

まとめ

遺言書の相談は司法書士、弁護士などに依頼することも可能ですが、相続税が発生する方の遺言書作成は税理士に相談すべきです。

なぜなら相続税は財産の分け方によってその税額が変動する場合があるため、無駄に税金を増やさないためにも、税額への影響を加味しながら分け方を決めていくことが重要だからです。

その他にも遺言書の作成を相続専門の税理士に依頼することには多くのメリットがあります。

以下の記事では、相続に強い税理士を紹介していますので、是非とも参考にして下さい。