「地積規模の大きな宅地」を相続したら、どうしますか?
そもそも、その土地の価値を知りたいですよね。
また、相続税が幾ら掛かるのかも大きな悩みとなります。
今回は、地積気規模の大きな土地の評価額を算出する方法についてご説明します。
地積規模の大きな宅地
「地積規模の大きな宅地の評価」が適用されるのは、すべての土地ではありません。
適用対象になるのは一定の地域内の一定以上の大きな(広い)土地のみです。
地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500平方メートル以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000平方メートル以上の地積の宅地をいいます。
地積規模の要件は、利用の単位となっている1画地の宅地(評価単位)ごとに判定します。
なお、贈与、遺産分割等によって宅地の分割が行われた場合には、原則として、分割後の画地を1画地の宅地とします(注)。複数の者に共有されている宅地については、共有者の持分に応じてあん分する前の共有地全体の地積により地積規模を判定します。
・首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地または同条第4項に規定する近郊整備地帯
・近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域または同条第4項に規定する近郊整備区域
・中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
基本的には宅地が対象ですが、宅地への転用が可能であれば農地や山林、原野にも適用されます。
土地の区域について
土地の「区域」についての要件は以下の通りです。
- 普通住宅地区または普通商業・併用住宅地区
- 市街化調整区域ではない
- 都市計画の用途地域が「工業専用地域」ではない
- 大規模工場用地に該当しない
評価対象となる宅地が工業専用地域とそれ以外の用途地域にわたる場合には、その宅地の全部がその宅地の過半の属する用途地域に所在するものと判定します。
容積率について
- 東京都の特別区の場合300%未満
- それ以外の宅地の場合400%未満
「地積規模の大きな宅地の評価」の適用に係る容積率は、指定容積率(建築基準法第52条第1項)により判定します。
地積規模の大きな宅地の評価
「地積規模の大きな宅地の評価」は、相続税や贈与税などの国税を計算するときの「土地の評価方法」の一つです。
広い土地の場合、土地評価方法の原則である「路線価」や「評価倍率」方式を修正して、価格補正されます。
その補正計算の方法が「地積規模の大きな土地の評価」です。
広い土地は「そのままでは使いにくい」です。
特にマンションや商業施設として利用できない場所では、あまりに広すぎる土地は足かせにしかならないケースがあります。広すぎる土地は「使い勝手が悪い」です。
しかし路線価や評価倍率による原則的な評価方法では「土地の面積に応じた評価方法」となるので、土地が広ければ広いほど税金が高額になってしまいます。
使い勝手が悪く実際にはそれほどの価値がないにもかかわらず税金だけ高くなるのは不合理なので、一定のケースでは「規模格差補正率」によって土地評価額を減額するのです。
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地のうち、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在するものとなります。
また、倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。
評価方法
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地については、次に掲げる路線価の価額と倍率の価額のいずれか低い価額により評価します。
(1) 路線価地域に所在する場合
路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価します。
評価額=路線価 x 奥行価格補正率 x 不整形地補正率などの各種画補正率
X 規模格差補正率 x 地積[m2]
※評価対象となる宅地の接する正面路線が2以上の地区にわたる場合には、その宅地の過半の属する地区をもって、その宅地の全部が所在する地区と判定します。
(2) 倍率地域に所在する場合
倍率地域に所在する「地積規模の大きな宅地」については、次のうちいずれか低い方の価額により評価します。
①:評価額= その宅地の固定資産税評価額 x 倍率
or
②:評価額=路線価 x 奥行価格補正率 x 不整形地補正率などの各種画補正率
X 規模格差補正率 x 地積[m2]
※奥行価格補正率は普通住宅地区を使用①と②の低い方の値
(注)市街地農地等(市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林および市街地原野をいいます。)の場合
その市街地農地等が宅地であるとした場合に「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地に該当するときは、「その農地等が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額」について「地積規模の大きな宅地の評価」の定めを適用して評価します。
ただし、路線価地域にあっては、宅地の場合と同様に、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものに限られます。
なお、市街地農地等であっても、宅地へ転用するには多額の造成費を要するため、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない場合や、急傾斜地などのように宅地への造成が物理的に不可能であるため宅地への転用が見込めない場合については、戸建住宅用地としての分割分譲が想定されませんので、「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となりません。
不整形地補正率などの各種画補正率
路線価を調べたら、次に土地状況に応じた補正を行います。同じ面積でも、土地の形状や奥行、道路が二面で道路に接しているかなどの状況に応じて、実際の使い勝手や価値はかなり異なってきます。
路線価はそういった土地の個性を無視して一律計算しているので、実際の土地評価の場面では各種の要素を考慮して価格修正を行います。
たとえば土地の形状が使いにくい状況になっている場合には不整形地補正率をかけ算して土地価格を減額します。
また奥行が長すぎたり短すぎたりすると、やはり土地を使いにくくなるので土地価格を減額できます。
反対に、土地が二面以上道路に接していると使い勝手が良くなるので、通常価格よりも加算されます。
規模格差補正率
規模格差補正率は、次の算式により計算します(小数点以下第2位未満は切り捨てます。)。
上記算式中の「」および「」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表のとおりです。
(1) 三大都市圏に所在する宅地
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
500以上 1,000未満 |
0.95 | 25 |
1,000以上 3,000未満 |
0.90 | 75 |
3,000以上 5,000未満 |
0.85 | 225 |
5,000以上 | 0.80 | 475 |
(2) 三大都市圏以外の地域に所在する宅地
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
1,000以上 3,000未満 |
0.90 | 100 |
3,000以上 5,000未満 |
0.85 | 250 |
5,000以上 | 0.80 | 500 |
上記算式中の「」および「」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表のとおりです。
三大都市圏とは、
関東エリア
- 東京都の特別区全域を始めとした多くの市町村
- 埼玉県、千葉県、神奈川県の多くの地域、茨城県の一部の市町村
関西エリア
- 大阪府の多くの市町村、京都府、兵庫県、奈良県の一部の市町村
東海エリア
- 愛知県の多くの市町村、三重県の一部の市町村
地積規模の大きな宅地の評価例
指定容積率の異なる2以上の地域にわたる場合の容積率の判定
評価対象となる宅地が指定容積率の異なる2以上の地域にわたる場合には、その宅地の容積率はどのように判定するのでしょうか。
【回答】
評価対象となる宅地が指定容積率(建築基準法第52条第1項)の異なる2以上の地域にわたる場合には、各地域の指定容積率に、その宅地の当該地域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計により容積率を判定します。
《例》
次の図のような宅地(地積1,400、三大都市圏以外の地域に所在)の指定容積率は、
となります。
計算例①(一般的な宅地の場合)
次の図のような宅地(地積750、三大都市圏に所在)の価額はどのように評価するのでしょうか(地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしています。)。
【回答】
- 規模格差補正率の計算(小数点以下第2位未満切捨て)
- 評価額
計算例②(用途地域が工業専用地域とそれ以外の地域にわたる場合)
次の図のような宅地(地積4,000、三大都市圏以外の地域に所在)の価額はどのように評価するのでしょうか(用途地域以外の地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしています。)。
【回答】
- 用途地域の判定
評価対象となる宅地が2以上の用途地域にわたる場合には、その宅地の全部がその宅地の過半の属する用途地域に所在するものと判定します。
上図の宅地については、敷地の過半(3,000)が工業地域に属していることから、その宅地の全部が工業地域内に所在するものと判定します。
したがって、上図の宅地は、その全部が「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となります。 - 規模格差補正率の計算(小数点以下第2位未満切捨て)
- 評価額
計算例③(指定容積率の異なる2以上の地域にわたる場合)
次の図のような宅地(地積1,400、三大都市圏以外の地域に所在)の価額はどのように評価するのでしょうか(容積率以外の地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしています。)。
【回答】
- 容積率の判定
評価対象となる宅地が指定容積率の異なる2以上の地域にわたる場合には、各地域の指定容積率に、その宅地の当該地域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計により容積率を判定します。
したがって、上図の宅地の指定容積率は、
となり、容積率が400%未満となるため、その宅地の全部が「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となります。 - 規模格差補正率(小数点以下第2位未満切捨て)
- 評価額
計算例④(正面路線が2以上の地区にわたる場合)
次の図のような宅地(地積1,500、三大都市圏以外の地域に所在)の価額はどのように評価するのでしょうか(地区以外の地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしています。)。
【回答】
- 地区の判定
評価対象となる宅地の接する正面路線が2以上の地区にわたる場合には、その宅地の過半の属する地区をもって、その宅地の全部が所在する地区と判定します。
上図の宅地の場合、普通住宅地区に属する部分の地積(900)が中小工場地区に属する部分の地積(600)よりも大きいことから、その宅地の全部が普通住宅地区に属するものと判定します。
したがって、上図の宅地は、その全部が「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となります。 - 規模格差補正率の計算(小数点以下第2位未満切捨て)
- 評価額
※1 路線価の加重平均の計算
原則として、判定した地区に係る画地調整率を用います。
計算例⑤(倍率地域に所在する宅地の場合)
次の図のような倍率地域に所在する宅地(地積3,000、三大都市圏以外の地域に所在)の価額はどのように評価するのでしょうか(地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしています。)。
宅地の固定資産税評価額:105,000,000円
近傍の固定資産税評価に係る標準宅地の1当たりの価額:50,000円
倍率:1.1倍
【回答】
- 標準的な1当たりの価額の計算
- 規模格差補正率(小数点以下第2位未満切捨て)
- 評価額
※1 倍率地域に所在する宅地は、普通住宅地区に所在するものとして計算します。
2 その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額が「地積規模の大きな宅地の評価」(財産評価基本通達20-2)に準じて計算した価額を上回る場合には、「地積規模の大きな宅地の評価」に準じて計算した価額により評価します。
計算例⑥(不整形地の場合)
次の図のような宅地(地積1,600、三大都市圏に所在)の価額はどのように評価するのでしょうか(地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしています。)。
【回答】
- 不整形地の計算上の奥行距離による奥行価格補正
- 不整形地補正率
- 規模格差補正率の計算(小数点以下第2位未満切捨て)
- 評価額
計算例⑦(市街地農地の場合)
次の図のような市街地農地(地積1,500、地目:畑、三大都市圏に所在)の価額はどのように評価するのでしょうか(地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしています。)。
【回答】
- 奥行価格補正後の価額
- 規模格差補正率(小数点以下第2位未満切捨て)
- 宅地であるとした場合の価額
- 市街地農地の評価額
まとめ
地積の大きな土地を相続した場合には、先ず、その土地の評価額を確認した上で、マンション等の有効活用や土地の分割ができないかを検討しましょう。
相続時には、「地積規模の大きな宅地の評価」を利用して相続税を低くしておき、相続完了後に分譲住宅等にする方法もあります。
詳しくは、相続に詳しい税理士のアドバイスを受けるのが正解です。
以下では、相続に詳しい税理士に相談することが可能です。
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