土地の有効活用事例!アパート経営と駐車場経営どちら?事例で検証

不動産投資
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相続税の節税対策として、賃貸経営を考える人は多く存在しています。

不動産メーカーや税理士も賃貸経営を勧める方が非常に多いです。

不動産の賃貸経営として直ぐに思いつくのが、駐車場経営とアパート経営かと思います。

実際に賃貸経営をする場合にどちらがお得なのでしょうか?

 

今回は、土地の有効活用として、駐車場経営とアパート経営でどちらがお得なのか事例を使って検証してみたいと思います。

 

 

 

 

不動産の賃貸経営の比較

不動産対策の例として、「持っている土地を賃貸にすることで相続対策になります。」という話を良く聞きますが、本当にそうでしょうか?

土地の有効活用については、色々かんがえらえますが、今回は、以下の様な土地を持っている場合の土地の活用方法として、「駐車場経営をした場合」と「アパート賃貸経営をした場合」を比較して、どちらがお得なのか検証してみたいと思います。

 

例えば、以下の様な方が相続対策として不動産の賃貸をすることを想定します。

家族構成:配偶者+子供2人
本人は、働いておらず、10年後に死亡することを推定します。

保有財産:預貯金:1億円
自宅:200m2(相続税評価額1億円)
土地:遊休地 300m2(相続税評価額1億円)

■相続税

相続財産=3億円
控除額=4,800万円

法定相続割合で相続した場合の相続税
課税遺産総額=2億5,200万円
配偶者=0円、子供1,190万円づつ

小規模宅地の特例を使用して配偶者が自宅を取得した場合
課税遺産総額=1億7,200万円
配偶者=0円、子供660万円づつ

なお、相続税の計算方法については、以下の記事で説明していますのでご参照願います。

 

実際に検証してみたいと思います。
なお、検証にあたっては、以下の内容で検証してみます。

 

駐車場経営の例

遊休地の土地を10年後に売却することを前提として、駐車場にします。

将来の売却を前提としているため、駐車場は立体駐車場にはしないで費用をかけない様にして活用することを考えます。

 

経営する駐車場の概要

駐車場は20台の駐車スペースを用意し、舗装して料金精算機、ロック板、監視カメラ、外灯を用意します。

利用者は、1日20台の利用があり、1回の利用が1,000円のコインパーキングとします。

駐車場の管理は自分で行うこととして、外部業者は利用しないこととします。

 

初期費用

はじめに、駐車場にするためにかかる費用を計算します。

整地費用
駐車場にするための整地費用は主に以下の通りです。

舗装については、以下の様な方法があります。

  1. コンクリート舗装(10,000円/m2
  2. アスファルト舗装(5,000円/m2
  3. 砂利を敷いて区画ロープで駐車マスを作る

今回は、コンクリート舗装することにしたため、10,000円/m2x300m2=300万円かかります。

 

設備費

設備としては、料金精算機、ロック板、監視カメラ、外灯を用意することとしました。

  • 料金精算機 1台50万円x2台=100万円
  • ロック板  1台10万円x20台=200万円
  • 必要に応じて監視カメラ、外灯 50万円 など

初期費用は、合計650万円です。
なお、これらの設備にかかった費用が150万円未満であれば課税対象にはなりません。

運用時のキャッシュフロー

年間駐車場収益

年間収益=20台x1,000円x365日=730万円

 

維持管理費

【税金】

土地の固定資産税=課税標準額×税率(1.4%)
        =10,000円x1.4%
        =140万円/年

一戸建てやアパート、マンションが建っている「住宅用地」は固定資産税の減税対象になりますが、駐車場の場合は対象から外れるため、固定資産税の満額を支払うことになってしまいます。

固定資産税(償却資産)初年度=取得価格 ×(1 - 耐用年数に応ずる減価率 ÷ 2 )×税率(1.4%)
※今回は減価率を一律、0.2として計算します。
=650万円×(1 - 0.2 ÷ 2 )x1.4%
=8.19万円

固定資産税(償却資産)=取得価格 ×(1 - 耐用年数に応ずる減価率 )×税率(1.4%)
=650万円×(1 - 0.2 )x1.4%
=7.28万円

なお、固定資産税の詳細の計算方法については、以下の記事を参照願います。

 

所得税=課税される所得金額(収入 - 必要経費- 各種所得控除)× 所得税率 - 控除額
※必要経費(30万円)、各種所得控除は無しとします。
=(730万円-30万円)x23% ー 63万6,000円
=97.4万円

なお、所得税の詳細の計算方法については、以下の記事を参照願います。

 

維持管理費の合計額は、必要経費30万円を含めて275.5万円なので、以下簡易的に280万円として計算します。

税金の他にも、清掃などの運営費や税金のほか、機械のメンテナンス費、電気代、また警備会社との連携にかかる費用なども必要になりますが、今回は、初期投資の設備費のみに限定して計算しています。

 

相続税の節税効果

駐車場にしたことにより、相続税がどの様に変わるかを見てみます。

結論的には、駐車場にしたことにより、相続税の変化はありません。

また、小規模宅地の特例については、配偶者が既に自宅で利用していないので利用できません。

もし、自宅に小規模宅地の特例を使用していない場合には、200m2分については適用することが可能であり、その分については半額にて評価することが可能です。
具体的には、以下の通りです。

駐車場の評価額=1億円*200m2/300m2*50%+1億円*100m2/300m2
=6,667万円

駐車場にしたことによる土地評価額の低下も発生しないので、相続税的には節税効果はありません。

評価

実質利回り

実質利回り = (年間の収入 ー 諸費用) ÷ 初期費用 × 100
=(730万円 ー 300万円) ÷ 650万円 × 100
=66%

 

IRR(内部収益率)

IRR=68.9%

現在価値 266 158 93 55 33 19 11 7 4 2 68.9%
単位:万円
初年度 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目 IRR
初期投資 650
収入 730 730 730 730 730 730 730 730 730 730
支出 280 280 280 280 280 280 280 280 280 280
合計 450 450 450 450 450 450 450 450 450 450

なお、IRRの詳細については、以下の記事で詳しく説明していますので、ご参照下さい。

 

 

 

アパート経営の例

遊休地の土地を10年後に売却することを前提として、アパートを建設して10年間賃貸します。

アパートの建設費として、諸経費を含めて1億円で、預貯金の1億円を使用することにしました。

 

アパートの収支計画

  • 建物建築の総事業費 1億円
  • 年間家賃収入    10室x10万円/月x12ヶ月=1,200万円/年

賃貸に対する割合等は以下の様に前提します。

  • 借地権割合=60%
  • 借家権割合=30%
  • 賃貸割合 =100%

 

初期費用

  • 付帯工事費   2,000万円
    建物本体価格の20%前後かかるのが一般的です。
  • 諸費用     1,000万円
    ※本体工事費の1割弱を見ておくのが一般的です。
  • 消費税     1,000万円
    ※10%です。
  • 実建物の建設費 6,000万円

建物建築費合計:1億円

 

運用時のキャッシュフロー

年間家賃収益

年間収益=10室x10万円/月x12ヶ月=1,200万円/年

 

主な経費
アパート経営の経費は、「アパート経営に関する費用」が経費として計上できます。
主な経費としては、以下の様なものがあります。
  • 税金:固定資産税、都市計画税、減価償却費
  • 管理費:外部委託費、人件費
  • 修繕費:共用部の修繕や排水管の工事などの費用
  • 広告宣伝費:入居者を募集するためにかかった広告費用

上記の税金以外の管理費、修繕費、広告宣伝費等の諸経費は家賃収入の10%位が目安と考えて、120万円/年とします。

 

土地の固定資産税

土地の評価額=遊休地の土地の評価額 x(1ー借地権割合x借家権割合x賃貸割合)
=1億円x(1ー60%x30%x100%)
=8,200万円

固定資産税=課税標準額×税率(1.4%)
     =(8,200万円x1.4%)x200/300×1/6+(8,200万円x1.4%)x100/300×1/3
     =25.5万円/年

※住宅用地の特例により、住宅やアパートなど人が居住するための家屋の敷地として利用されている土地(住宅用地)には特例措置が設けられており、固定資産税が軽減されます。200m2までは1/6、200m2を超える部分の土地の場合には、1/3となります。
建物の固定資産税

建物は建設すると評価額として70%位の価格で評価されます。
更に、賃貸とすることにより、家屋の評価が更に70%に削減されます。

建物の評価額=(建物建築費x70%)×(1‐借家権割合×賃貸割合)
      =(10,000万円 X 70%)x(1-30% X 100%)
=4,900万円

固定資産税=建物の評価額×税率(1.4%)
=4,900万円x1.4%x1/2
=34.3万円

※住宅を新築した場合は、軽減措置を受けられます。対象となるのは、2024年(令和6年)3月31日までに新築された物件です。新築住宅を購入した後の一定期間、固定資産税が2分の1に軽減されます。
なお、建物の評価額は毎年老朽化するため、減価償却により評価額が下がります。
このため、減価補正率をかけた金額が実際の固定資産税になります。
固定資産税(償却資産)
固定資産税(償却資産)初年度=取得価格 ×(1 - 耐用年数に応ずる減価率 ÷ 2 )×税率(1.4%)
※今回は減価率を一律、0.2として計算します。
=2,000万円×(1 - 0.2 ÷ 2 )x1.4%
=25.2万円

固定資産税(償却資産)=取得価格 ×(1 - 耐用年数に応ずる減価率 )×税率(1.4%)
=2,000万円×(1 - 0.2 )x1.4%
=22.4万円

なお、固定資産税の評価額や減価償却等については、以下の記事で詳しく説明していますのでご参照下さい。
所得税

所得税=課税される所得金額(収入 - 必要経費- 各種所得控除)× 所得税率 - 控除額
※必要経費は、各種所得控除は無しとします。
=(1,200万円-120万円)x33% ー 153万6,000円
=202.8万円

なお、所得税の詳細の計算方法については、以下の記事を参照願います。

支出合計
支出額の整理をすると
  • 固定資産税 約85万円
  • 所得税   約203万円
  • 諸経費   約120万円

合計支出 408万円
※以下の計算を簡単にするため400万円で以下を考えます。

 

相続税の節税効果

対策前の不動産=土地の評価額+預貯金(建設費)
=10,000万円+10,000万円
対策後の不動産=アパートの土地の評価額+建物の評価額
=8,200万円+4,900万円
=13,100万円

対策前後の差額=対策前ー対策後
=(20,000)ー(13,100)=6,900万円

相続税の節税効果(税率30%の方の場合)
低減した評価額6,900万円x実効税率30%=節税効果2,070万円

不動産の評価額が6,900万円下がったので、相続税としては2,070万円下がるが、本当に得したのでしょうか?

対策を実施したことにより保有財産は以下の様に替わっています。

保有財産
対策前  3億円 対策後 2億3,100万円
預貯金:1億円
自宅:200m2(相続税評価額1億円)
土地:遊休地 300m2(相続税評価額1億円)
預貯金:0円
自宅:200m2(相続税評価額1億円)
アパート:300m2(相続税評価額1億3,100万円)

単に財産が減っただけではないでしょうか?

 

評価

実質利回り

実質利回り = (年間の収入 ー 諸費用) ÷ 初期費用 × 100
=(1200万円 ー 400万円) ÷ 10,000万円 × 100
=8%

 

IRR(内部収益率)

IRR=-5.1%

初年度 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目 IRR
初期投資 10,000
収入 1,200 1,188 1,176 1,164 1,153 1,141 1,130 1,118 1,107 1,096
支出 400 400 400 400 400 400 400 400 400 400
合計 800 788 776 764 753 741 730 718 707 696
現在価値 843 875 907 941 977 1,013 1,051 1,090 1,130 1,172 -5.1%

不動産の投資は最低でもIRRが5%以上なければ、投資対象としてみることはできないので、本アパート経営は投資的には、失敗と言わざる終えません。

 

なお、IRRの詳細については、以下の記事で詳しく説明していますので、ご参照下さい。

 

 

 

2つの投資案件の比較

結論から言いますと、「駐車場経営」は投資としては成功で、相続税対策としては失敗です。

反対に、「アパート経営」は、投資としては失敗で、相続税対策としては成功と言えます。


「駐車場経営」では、当初の目的であった相続税を引き下げるということができていません。このため、収益が出た分が余計に資産を増やしてしまい、より相続税を引き上げる結果になりかねません。

しかしながら、幸いなことに、この方には子供が居るので、少しずつ不動産を子供に生前贈与しておく事により、不動産の評価額を減らし、更に、有効な定期収入を子供達に残してあげることが可能です。

また、預貯金として1億円から初期投資費用の650万円以上の費用が発生してないので、遺族も満足するでしょう。

結果として、「駐車場経営」は成功と言えるかと思います。


一方の「アパート経営」については、当初の投資金額が1億円と大きいため、10年の賃貸で資金の回収ができていません。更に、資産も全額つぎ込んでしまったため、遺族には、賃貸アパートと自宅しか残らない状況です。

実際の相続においては、相続税が2,000万円程削減されましたが、流動性資産である預貯金が相続されておらず、遺族は相続時の財産分割や納税費用の支払いに困ってしまいます。

更に、相続財産もアパート経営の利益を除けば、7千万円位資産が減ってしまっています。

アパート経営は着実に利益は上げていますが、当初の投資金額を回収できるまでには、あと4年はアパート経営を続けなければいけません。

遺族は本当に、アパート経営を望むのでしょうか?

最悪、アパートを売却することになりますが、元々あった財産2億円(土地1億円、預貯金1億円)が、還元利回りを7%として計算しても11,429万円にしかならないし、相続した不動産を売却すると譲渡所得税が課税されるので、遺族としては複雑な状況となります。

結果として「アパート経営」は失敗と言えるかと思います。

 

なお、譲渡所得税に対する詳細な説明は以下の記事を参照願います。

 

 

 

まとめ

今回は、駐車場経営と賃貸アパート経営の例を紹介しましたが、これは、あくまでも一例です。

良い相続対策とは、「対策前と後で相続税が減っていること」ではなく「純資産が減られないことが重要」です。一般的に、アパート経営をした場合に、アパートを建てた方が良いと言われる案件は1割以下であることを覚えておいて下さい。

敷地の広さや形、立地条件、資金回収計画等により、投資案件の良し悪しは決定します。

このため、駐車場経営が良くて、賃貸アパート経営が悪いということではありません。

土地の有効活用は、土地の形もそれぞれで違うし、立地条件のそれぞれ違うのです。

一つとして同じものはありませんので、自分で色々な要素を調査して色々なパターンをシミュレーションしてみることが非常に重要です。

なお、シミュレーションに困った場合には、相続に詳しい税理士に相談することがお勧めです。

以下の記事では、相続に詳しい税理士をご紹介していますので、是非ご参考にしてください。

 

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