この「山林の納税猶予」の特例は、山林を受け継いだ後にずっと山林の経営を続けていく考えの人にとっては大変お得な特例です。
適用するには、いくつかの要件があるので、しっかりと理解したうえで活用することにより、納税自体が免除」されますので、山林を持たれている方はキチンと理解しましょう。
今回は、「山林の納税猶予」の特例についてご説明します。
「山林の納税猶予」の特例は、特定森林経営計画に定められている区域にある山林を、遺贈または相続した相続人に対して、一定の要件を満たしている場合に納税が猶予される制度です。
特定森林経営計画とは、山林の経営規模拡大の目標を定め、そのために必要な整備を進めるもので、市町村長等の認定を受けた森林経営計画です。
この納税猶予が認められると、その山林についての相続税額の80%を納税猶予してもらえます。
猶予された納税額は、条件が満たされていれば継続することができ、後継者である相続人が死亡した場合は、それまで猶予されてきた相続税の全額が免除されます。
この「山林の納税猶予」を受けるには、被相続人である山林経営者と、その後継者である相続人とが森林経営計画に基づいた森林経営をしていることが必要です。
さらに被相続人と相続人それぞれに必要な要件があります。
特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林(立木又は土地をいいます。)を有していた一定の被相続人から相続又は遺贈により特例施業対象山林の取得をした一定の相続人(「林業経営相続人」といいます。)が、自ら山林の経営(施業又はその施行と一体として行う保護をいいます。)を行う場合には、その林業経営相続人が納付すべき相続税のうち、特例山林に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます(猶予される相続税額を「山林納税猶予税額」といいます。)。
「山林の納税猶予」の特例が適用される山林の要件
「山林の納税猶予」の特例が適用可能な施業対象山林の範囲は、被相続人が有していた山林のうちその相続開始の前に特定森林経営計画が定められている区域内に存在しており、次に掲げる要件の全てを満たす必要があります。
- その被相続人又はその被相続人からその有する山林の全部の経営の委託を受けた者によりその相続開始の直前まで引き続きその特定森林経営計画に従って適正かつ確実に経営が行われてきた山林であること
- その特定森林経営計画に記載されている山林のうち作業路網の整備を行う部分が、同一の者により一体として効率的な施業を行うことができるものとして措置令第40条の7の6第4項で定める要件を満たしていること
なお、森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存する山林を除きます。
特例施業対象山林で相続税の期限内申告書にこの制度の適用を受ける旨の記載があるもので、林業経営相続人が自ら経営を行うものであって、次に掲げる要件の全てを満たすものをいいます。
- その特定森林経営計画において、作業路網の整備を行う山林として記載されているもの
- 都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在するものでない
- 立木にあっては、相続開始の日からその立木が市町村森林整備計画に定める標準伐期齢に達する日までの期間が林業経営相続人のその相続開始の時における平均余命期間(最高30年)を超える場合における立木である
また、相続税の申告期限までに、共同相続人又は包括受遺者によってまだ遺産分割がなされていない山林は、この特例の適用を受けることができません。
特定森林経営計画の範囲とは?
市町村長等の認定を受けた森林法第11条第1項に規定する森林経営計画で、次に掲げる要件の全てを満たすものをいいます。
- 対象とする山林が同一の者により一体として整備することを相当とするものであること
- 森林経営計画に森林法第11条第3項に規定する事項が記載されていること
- 上記に掲げるもののほか、その森林経営計画の内容が同一の者による効率的な山林の経営を実現するために必要とされる一定の要件を満たしていること
被相続人の要件
被相続人が以下のいずれにもに該当する人である必要があります。
- 特定森林経営計画が定められている区域内に所有している山林の作業路網を含めた部分の面積が100ha以上の山林を所有している人
- 特定森林経営計画の達成のため必要な機械その他の設備を利用でき、特定森林経営計画に従って適正かつ確実に経営及び作業路網の整備を行い、山林の経営の規模拡大を行うものと認められた人
- 特定森林経営計画に従って当初認定起算日から死亡の直前まで継続して、山林の経営を適正かつ確実に行ってきた者として農林水産大臣の確認を受けてきた人
なお、森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存するものを除きます。
相続人の要件
相続人は、被相続人から相続又は遺贈によりその被相続人がその相続開始の直前に有していた全ての山林(特定森林経営計画が定められている区域内に存するものに限ります。)を取得した個人であって、以下の全てに該当する人である必要があります。
- 相続開始の直前において、推定相続人であること
- 相続開始の時から申告期限まで引き続きその山林(特定森林経営計画が定められている区域内に存するものに限る。)の全てを有し、かつ、その特定森林経営計画に従ってその経営を行っていること
- 特定森林経営計画に従ってその山林の経営を適正かつ確実に行うものと認められる一定の要件を満たしていること
また、相続人も被相続人の後継者として森林経営計画の対象になっている森林のすべてについて相続していて、森林経営計画の実行について農林水産大臣の確認を受けていることなどが必要です。
納税猶予税額の免除要件
この制度の適用を受ける林業経営相続人が死亡した場合には、猶予中相続税額に相当する相続税が免除されます。
この場合には、その林業経営相続人の相続人は、その死亡した日から同日以後6月を経過する日までに、届出書を税務署長に提出する必要があります。
また、山林納税猶予税額が免除されるときまでに、特例山林について山林経営の廃止、譲渡、転用などの一定の事由等が生じた場合には、山林納税猶予税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要があります。
「農地の納税猶予」の計算方法
本「山林の納税猶予」の特例を適用することにより、山林の評価額を20%に減額ることが可能となるため、大幅に、相続税の節税を行うことが可能となります。
- 林業経営相続人以外の相続人の取得財産は不変とした上で、林業経営相続人が、通常の課税価格による特例山林のみを相続するものとして計算した場合の林業経営相続人の相続税額
- 林業経営相続人以外の相続人の取得財産は不変とした上で、林業経営相続人が、課税価格を20%に減額した特例山林のみを相続するものとして計算した場合の林業経営相続人の相続税額
利子税の納付
この特例の適用を受けた林業経営相続人は、納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合には、納付する税額を基礎とし、相続税の申告書の提出期限の翌日から納税の猶予期限までの期間(日数)に応じ、年3.6%の割合を乗じて計算した金額に相当する利子税を、納付する必要があります。
ただし、各年の特例基準割合(※)が7.3%に満たない場合は、以下のとおりとなります。
利子税 = 3.6%×特例基準割合(※)÷7.3%
(注)0.1%未満の端数は切り捨て
(注)特例基準割合(※)が変動すると利子税の割合も変動します。
※ 特例基準割合
【平成25年12月31日まで】
各年の前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率に4%を加算した割合
【平成26年1月1日以降】
各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合
相続税の納税猶予の手続き要件
この特例を受けるためには、相続税の申告書を期限内に提出するとともに山林納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保(特例山林でなくても差し支えありません。)を提供する必要があります。
その際には、市町村長や農林水産大臣の証明書、森林経営計画の計画書や認定通知書の写しなどの必要書類も添付しければなりません。
また、納税が猶予される相続税額と利子税額に見合う担保を税務署に提供しなればなりません。
なお、この特例は、租税特別措置法第69条の5第1項に規定する特定計画山林の特例の適用を受ける場合には適用することができません。
相続税の申告手続
なお、林業経営相続人は、相続税の申告期限の翌日から猶予税額の全部の期限が確定する日までの間に経営報告基準日が存する場合には、届出期限(経営報告基準日の翌日から5月を経過する日をいう。)までに、継続届出書を税務署長に提出する必要があります。
納税猶予期間中の継続届出
その後は、当初の10年間は1年ごと、その後は3年ごとに継続届出書を税務署に提出する必要があります。ただし、森林経営計画の認定が取り消されるなど、条件に合わなくなった場合には、納税猶予が取り消されます。
そして、後継者が死亡した場合は、免除届けを提出することによって、猶予されていた相続税額の全額が免除されることになります。
なお、継続届出書の提出がない場合には、原則として、この特例の適用が打ち切られ、山林納税猶予税額と利子税を納付しなければなりません。
「山林の納税猶予」の打ち切り
「山林の納税猶予」の特例は以下の事由が発生した場合には打ち切りとなります。
- 森林経営計画の認定が取り消されたり、継続して認定を受けることができなかった場合
- 特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林について伐採、造林又は作業路網の整備のいずれも行わない年があった場合
- 特例山林について、譲渡等又は路網未整備等があった場合
- 特例山林に係る山林の経営を廃止した場合
- 所得税法第32条第1項に規定する山林所得に係る収入金額が零となった場合
- この特例の適用を受けることをやめる旨を記載した届出書を提出した場合
- 継続届出書の提出がなかった場合
- 継続届出書が届出期限までに税務署長に提出されない場合
- 担保についての命令に応じない場合
- 継続届出書に記載された事項と相違する事実が判明した場合
打ち切りとなった場合には、猶予されていた相続税の全部又は一部とその税に対する利子も納税しなければなりません。
なお、林業経営相続人が、障害、疾病その他の事由によりその適用を受ける特例山林について、経営を行うことが困難な状態となった場合において、その特例山林の全部の経営を推定相続人に委託をしたときは、経営の委託をした日から2月以内に、経営の委託をした旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときに限り、納税猶予が継続されます。
全額打ち切りの事由
林業経営相続人又は特例山林について次のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には、それぞれに掲げる日から2月を経過する日が納税猶予の期限となります。
- 特例山林の経営が適正かつ確実に行われていない場合において、農林水産大臣等から税務署長にその旨の通知があった日
- 林業経営相続人が特例山林の譲渡等があった場合又は特例山林が路網未整備等に該当することとなった場合において、その譲渡等又は路網未整備等があったその特例山林に係る土地の面積が、特例山林の面積の100分の20を超えるとき 農林水産大臣等から税務署長に100分の20を超えることとなった譲渡等又は路網未整備等に係る通知があった日
- 特例山林に係る山林の経営を廃止した場合のその廃止した日
- 林業経営相続人のその年分の山林所得に係る収入金額が零となった場合にその収入金額が零となった年の12月31日
- 林業経営相続人がこの特例の適用を受けることをやめる旨を記載した届出書を提出した場合 届出書の提出があった日
一部打ち切りの事由
- 林業経営相続人が特例山林の一部の譲渡等をした場合
- 特例山林が路網未整備等に該当することとなった場合
なお、特例山林の金額に対応する部分の金額に相当する相続税については、農林水産大臣等から税務署長にその譲渡等又は路網未整備等があった旨の通知があった日から2月を経過する日が納税の猶予に係る期限となります。
まとめ
この「山林の納税猶予」の特例は、相続人が林業を継続して特定森林経営計画に従い林業経営することが前提となっていますので、林業を廃止したり、譲渡したりすると納税猶予されていた金額と共に、利子税の納付も行わなければなりません。
もし、林業経営をしないのであれば、相続時において山林を売却することをお勧めします。
山林の売却については、専門家に依頼するのが良いかと思います。
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