相続税対策には、お墓などの購入や財産を寄附する方法があります。
相続財産を減らすことにより、相続税を軽減するという方法です。
相続する財産が減るので、当然、相続税が削減する訳ですが、単純に財産を減らすということであれば他にもいくらでも方法があります。
しかしながら、お墓などの祭祀財産は相続税が非課税であり、且つ、死亡した後に残る財産です。
また、お世話になった公共団体がある場合には、寄附をすることにより、喜ばれ、有益に財産を使用して貰えるというメリットがあります。
今回は、相続対策として非課税財産についてご説明します。
相続時の非課税財産
以下の様な財産は、非課税財産となり相続税の対象とはなりません。
- 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
- 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの。
- 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利。
- 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分。
- 相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分。
- 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの。なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件。
- 相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの
少し、判りにくいですよね。
もっと簡単に表現すると以下の4つとなります。
- お墓などの祭祀財産
- 相続人が国や地方公共団体等に寄付をした相続財産
- 非課税枠内(500万円×法定相続人の人数)で相続人が受け取る生命保険金
- 非課税枠内(500万円×法定相続人の人数)で相続人が受け取る退職
3、4については、別の記事で紹介していますので、ここでは1、2の説明を行います。
以下で詳しく説明します。
お墓などの祭祀財産
墓地、墓石、御霊屋(おたまや)、仏壇、仏具、神棚、神体、神具、位牌、庭内神しなど日常礼拝をしているものは相続税は非課税とされています。
相続税法第12条には、「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」は相続税の課税価格に算入しないと規定されています。
したがって、このような非課税財産を生前に購入しておけばその購入代金が丸々相続税の対象から除外されるのです。
あくまで日常礼拝をしているものですので、趣味で集めているものや売買目的で所有する骨董品は通常通り課税対象となります。
通常であれば、お墓などを第三者に売却することは想定できないことから、「売却することができるか否か」がひとつの判断基準になります。
都市部のお墓は永代使用量だけでも100万円を超えることもあるので、有効な節税対策です。
また、墓地等を購入して代金支払いが死亡後になってしまった場合には、その未払金は相続財産から控除できず節税にならないので必ず支払いも生前に済ませるようにしましょう。
ちなみに、非課税財産であるお墓を生前に買ってしまうことで課税財産である預金を減らすことができます。これも立派な節税対策です。
また、都市部では墓所も高額になるので、ローンで購入される場合もあるでしょう。相続税の計算には正味の遺産総額を計算する際に、遺産総額から借入金や未払金などのマイナスの財産を差し引く債務控除がありますが、非課税財産を購入するためのローンについては対象になりません。
なお、庭内神しとは、自宅の庭などにあるご神体を祭っている社等のことです。鳥居やお稲荷さんが建てられている場合が多いです。
庭内神しの敷地部分の土地も非課税になりますのでお忘れのないようにご注意ください。
非課税となる葬儀に関連する具体的な費用
相続税の対象となる財産から控除できるものとして葬儀関連の費用があります。このためできるだけ葬儀にかかった費用の領収書等は捨てないで残しておいて下さい。
「心付け、お布施、お車代」といった領収書を入手するのが難しいものでも、実際に支払ったものであれば相続財産から控除することができます。
このため、何月何日に誰にいくら支払ったのかということをメモしておくことをお勧めします。
特にお寺さんにお布施を支払う場合には数十万円から百万円を超える支出になるケースもあるため、忘れずに控除対象として集計したいものです。
【葬儀関連費用として控除できるものの例示】
- 医師の死亡診断書の発行費用
- 通夜、告別式にかかった費用
- 葬儀場までの交通費
- 葬儀に関する飲食代(通夜、告別式)
- 遺体の搬送費用
- 火葬料、埋葬料
- お手伝いさんへの心付け
- 運転手さんへの心付け
- お布施、読経料、戒名料
- 納骨費用
- その他通常葬式に伴う費用
- 香典返し
- 生花、お供え
※喪主・施主負担分は控除対象になります。 - 位牌、仏壇の購入費用
- 墓地、墓石の購入費用・墓地の借入料
- 墓石の彫刻料
- 法事(初七日、四十九日)に関する費用
- 医学上または裁判上の特別の処置に要した費用
- その他通常葬式に伴わない費用
現金であれば、必ず相続税の対象となりますが、生前に墓地や墓石などを購入しておくと、相続財産が引下げられるので、相続税が安くなるので、相続対策となります。
しかしながら、だからと言って、金の仏像などで、骨董品や投資商品として所有するものを購入してしまうと、非課税対象外となりますので気を付けて下さい。
葬儀についても同様で、あまりに高額な葬儀の場合は相場との差額が相続税の課税対象となります。
相続人が国や地方公共団体等に寄付をした相続財産
ここ数年、お世話になった学校などに遺産を寄附したいと考え、公益団体や国、地方公共団体に寄附する人が増えてきています。
遺産を寄附した場合は、相続税が非課税となる特例があります。しかし、要件を満たさなければ特例を受けられないので注意が必要です。
財産の一部を寄附した場合、寄附した金額に対して下記のような特例があります。
- 相続税の課税対象としない
- 寄附した金額を相続税の課税対象から外す
相続、遺贈により財産を受け取った人がが寄附をしても特例を受けることができますので節税につながります。
特例を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 寄付した財産が相続財産であること
- 相続税の申告期限までに寄附すること
- 寄附をした先が国や地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献する公益法人であること
なお、以下の様な場合には、この特例の適用対象外となります。
- 特定の公益法人が、寄附を受けた日から2年以内に特定の公益法人に該当しなくなった場合
- 特定の公益法人が、その財産を公益目的とする事業の為に使っていなかった場合
これらの場合は相続税を減らす為に寄附をしたと考えられますので、適用除外と判断されることになります。特例の適用対象になる寄附先は詳細に規定されています。
寄附した後に対象外だったということがないように、事前に寄附先や税務署、税理士などによく確認しておきましょう。
また、本特例は相続人が寄附をしたものが対象です。被相続人が生前に寄附をした場合は、被相続人において、所得税の寄附金控除の対象になります。
寄附した場合の計算式
相続財産を寄附した場合の計算式は下記の通りです。
その相続において課税される財産総額=相続財産総額ー寄附した金額
相続財産そのものが減ることで結果的に相続税も減ることになりますが、当然ながら寄附した分だけ財産は減ってしまうことになりますのでご注意下さい。
まとめ
相続税を減らす方法は控除額を見逃さないことと、課税対象となる財産を減らすことです。
相続税は税率が1段階上がると5~10%増えるため厳密な計算が求められます。もし、数万円で相続税の区分が代わるならお墓を購入したり、仏具・墓石を新調したり、寄附をすることを考えましょう。
お墓などは、地域によって差はあります平均約150万円~300万円ほどの費用なので相続税の税率調整には十分な効果を得ることができます。
なお、相続で何か困ったことがあったら、税理士に相談しましょう。
以下の記事では、相続に詳しい税理士の紹介をしていますので参考にして下さい。
コメント