医療法人の相続!持分あり医療法人の相続での持分税額控除、納税猶予

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医療法人を経営されている方必見!

医療法人のうち、99.2%が出資持分のある法人です。出資持分のある法人の出資者に相続が開始した場合には、相続人が出資持分を相続することになります。

改正医療法により、現在設立できるのは持分なし医療法人のみですが、それでも殆どの医療法人が持分ありなのが現状です。

医療法人は株式会社と違って配当が禁止されており、税引き後の利益がそのまま内部留保を形成し、出資持分評価額が右肩上がりで上昇しやすくなります。

長年の経営より純資産が蓄積されて、評価額が高額になっています。多額の相続税課税を受けることになり、地域医療の確保が困難になるという理由から、納税猶予制度や税額控除の制度が設けられています。

 

今回は、この様な医療法人の実態と相続税の納税対策について説明します。

 

 

 

医療法人に対する相続税の対策の利用可能な制度

医療法人の相続税の納税対策としては、以下の2つの制度が存在します。

  • 医療法人持分税額控除
  • 医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除・税額控除

どちらの制度も「持分あり」に対する制度となっています。

 

医療法人持分税額控除とは

相続人等が相続または遺贈により医療法人の持分を取得した場合、相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、認定医療法人の持分の全部又は一部を放棄したときは、届出書を提出することにより、その相続人等の相続税額から、放棄相当相続税額を控除するという制度です。

この相続税額から控除する放棄相当相続税額を「医療法人持分税額控除額」といいます。

なお、相続開始の時から相続税の申告期限までの間に医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合などには、この特例の適用を受けることはできません。

認定医療法人とは、持分の定めがある社団医療法人(経過措置型医療法人)が持分の定めがない社団医療法人への移行に関する計画を作成し、これを厚生労働大臣に提出して、その移行計画が適当である旨の認定を受けた医療法人のことです。

 

 

医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除・税額控除

相続人等が相続または遺贈により医療法人の持分を取得した場合、相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、認定医療法人であるときは、納付すべき相続税のうち、持分の価額に対応する相続税については、一定の要件を満たすことにより、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税が猶予されるという制度です。

この相続税額から猶予される相続税額を「医療法人持分納税猶予税額」といいます。

「移行期限」とは、認定移行計画に記載された持分の定めのない医療法人に移行する期限をいい、認定の日から5年以内とされています。

この制度は、経過措置医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合や、持分の譲渡をした場合、「医療法人持分税額控除」の適用を受ける場合には、適用されません。

また、相続税の申告書の提出期限までに、相続又は遺贈により取得した経過措置医療法人の持分の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない場合、その分割されていない持分については、この特例の適用を受けることができません。

 

 

 

医療法人の仕組み

医療法人とは

医療法人とは、病院、医師や歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設、または介護医療院の開設を目的として設立される法人です。(医療法第39条)

また、医療法人は、本来の業務に支障がない範囲で、定款や寄附行為で定められた条件に基づき、附帯業務が可能です。

具体的には、医療関係者の養成や再教育、医学や歯学に関する研究所の設置、医療法第39条に定められていない診療所の開設(例:巡回診療所や非常勤医師のいる診療所)などが含まれます。

ただし、附帯業務を主として行い、本来の業務を行わなかったり、附帯業務を委託したりするのは、医療法人の運営として不適当です。

医療法人は、基本的には医療や介護に関連した業務を主体としていますが、第42条に定められる範囲であれば、附帯業務を通じて多様な活動も可能です。

 

医療法人の分類

医療法人には、「社団たる医療法人」と「財団たる医療法人」があります。

全医療法人のうち99.1%が「社団たる医療法人」です。(平成22年3月末時点)

「社団たる医療法人」は、「社団医療法人」や「医療法人社団」とも言われます。(本記事では以下「社団医療法人」と言います。)

「社団医療法人」は、出資持分の有無という観点から、「出資持分のある医療法人」と「出資持分のない医療法人」に区分することができます。

「出資持分のある医療法人」は、「持分あり」から「持分なし」への移行を国が進めており、「経過措置型医療法人」とも呼ばれています。

「経過措置型医療法人」には、出資持分を限度とした払い戻しが可能な「出資額限度法人」が存在します。

なお、「出資額限度法人」「経過措置型医療法人」は、平成22年3月末時点で、社団医療法人の93.3%を占めています。

一方、「出資持分のない医療法人」には、資金の調達手段として基金の制度を採用している「基金制度を採用した医療法人」、医療法を根拠とする「社会医療法人」、租税特別措置法を根拠とする「特定医療法人」が存在します。

 

この「出資持分のある法人」と「出資持分のない法人」では、医療法人の事業承継において相続税額に大きな差が生じます。

「出資持分のある法人」は、出資者に相続が発生した場合、出資者の相続財産に持分が反映されますが、「出資持分のない法人」は、社員に相続が発生した場合、社員の相続財産には何の影響もありません。

 

出資額限度法人とは

出資額限度法人とは、定款を変更して、払い戻しを出資額以下にすることにより、相続税の負担を軽くし、社員退社時に請求又は会社解散時の残余財産分配の医療法人出資者への払戻が出資額を限度とする医療法人からの出資持分の払い戻しが可能に出来る制度です。

相続が発生したとき、後継者がいなければ、出資持分について相続人には相続税が課せられます。
また、医療法人側としては多額の出資持分の払い戻しの請求を受けることになります。

このとき、一般的に医療法人の資産の多くが不動産や医療機器などの固定資産であるため、現金で払い戻すことが困難となるので、医療法人の資産を保持しつつ、相続人の相続税の負担を軽減するため、出資額の限度でしか払い戻しができないようにしたのが出資額限度法人です。

但し、出資額限度法人は解散した場合にも出資額を限度とした払い戻しのみしか受けられず、余剰金は原則として払い戻しできずに、国や地方公共団体に帰属することになってしまいます。

 

 

 

 

持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行

持分なし医療法人への移行は、解散時に法人内に蓄積された利益が戻ってこないという理由でなかなか進んでいないのが現状です。

しかし、後継者が確実にいて解散するリスクが低い場合、特に大規模な医療法人であれば検討しても良いでしょう。

持分なし医療法人に移行することにより、出資金の相続税評価額をゼロ(基金拠出型医療法人の場合は基金額が上限)にできます。

持分なし医療法人へ移行するには、出資者全員が出資持分を放棄する必要があります。

注意点は、放棄した際に消滅する出資者の権利に係る経済的利益に対して、医療法人を個人とみなして贈与税が課税される場合があることです。

ただし、次の場合は、医療法人に贈与税が課されません。

  1. 社会保険診療報酬(介護保険・助産・予防接種を含む)に係る収入金額が全収入金額の80%を超えること
  2. 自費患者に対する請求方法が社会保険診療報酬と同一の基準で計算
  3. 医業収入が医業費用の150%以内であること
  4. 役員に対する報酬などが不当に高額にならないような支給基準を定めていること
  5. 法人関係者に対し,特別の利益を与えないこと

持分なし医療法人に移行する際は贈与税の負担の有無、負担があるならいくらからなのか事前に確認しておきましょう。

 

出資持分のない医療法人への移行に伴う贈与税

出資持分のある医療法人が定款変更を行って出資持分のない医療法人に移行する際に、出資持分を有する社員がその出資持分を放棄した場合、一定の要件を満たさないときは、当該医療法人に贈与税が課税されることになります。

このような贈与税の課税問題は、出資持分のない医療法人への移行を検討する際、大きな障害要因となる可能性がありますので注意が必要です。

 

 

 

医療法人の形態

医療法人(財団又は社団) 特定医療法人 特別医療法人
根 拠 法 医 療 法 租税特別措置法 医 療 法
認可・承認 都道府県知事の認可 国税庁長官の承認 都道府県知事による定款変更の認可
要 件 ・資産要件
病院等を開設する場合;
自己資本比率20%以上
・役員数
理事3人
監事1人以上
・理事長
原則医師又は歯科医師
医療法人のうち、
・財団又は持分の定めのない社団
・自由診療の制限
・同族役員の制限
・差額ベッドの制限
(30%以下)
・給与の制限
(年間3,600 万円以下)
等を満たすもの
医療法人のうち、
・財団又は持分の定めがない社団
・自由診療の制限
・同族役員の制限
・給与の制限
(年間3,600 万円以下)
等を満たすもの
法人税率 30% 22% 30%
収益業務の可否 収益業務は行えない 収益業務は行えない 収益業務が可能
法人数 40,030
(内一人医師医療法人
33,057)
374 47

 

 

医療法人持分税額控除の詳細

特例の控除額

相続税額から控除する放棄相当相続税額を「医療法人持分税額控除額」といいます。

「医療法人持分税額控除額」とは、認定医療法人の持分の価格を相続人等に係る相続税の課税価格とみなして計算した金額のうち、その相続人等により放棄がされた部分に相当するものとして、次に掲げる場合に応じて計算した金額をいいます。

(1)  認定医療法人の持分の全てを放棄※1した場合  医療法人持分納税猶予税額に相当する金額
(2)  認定医療法人が基金拠出型医療法人への移行をする場合において、持分の一部を放棄※1し、その残余の部分をその基金拠出型医療法人の基金として拠出※2したとき  医療法人持分納税猶予税額に相当する金額から基金として拠出した額に対応する部分の金額を控除した残額

※1 厚生労働大臣が定める「出資持分の放棄申出書」(医療法施行規則附則様式7)を認定医療法人に提出することにより放棄をしなければなりません。
※2 基金として拠出した額に対応する部分の相続税額は税額控除の対象となりません。

なお、以下のいずれかに該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。

  • 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合
  • 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、医療法人の持分の譲渡をした場合

 

出資持分の払戻しに伴う課税

出資持分の払戻額から当該出資持分に係る払込済出資額を差し引いた金額は配当所得とされ、払戻しを行う医療法人は、かかる配当所得の 20%相当額を源泉所得税として納付しなければなりません。

また、出資持分の払戻しを受けた者は、上記の配当所得につき、他の所得と一緒に確定申告を行う必要があります。

なお、出資持分のある医療法人の設立後に追加出資や出資持分の払戻しが行われて出資総額の増減が生じた場合は、その後における出資持分の払戻しの際に一部譲渡所得の生じることがあります。

 

 

 

 

特例を受けるための要件

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書を期限内に提出する必要があります。

要件 説明
被相続人 医療法人の持分を有していた人であること。
相続人等 被相続人から相続又は遺贈により医療法人の持分を取得し、かつ、相続開始の時から相続税の申告期限までの間に認定医療法人の持分の全部又は一部を放棄した人であること。
医療法人の持分 持分の放棄をした時において認定医療法人の持分であって、相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載したものであること。
※遺産分割されたものに限ります。
なお、厚生労働大臣の認定を受ける前に放棄をした持分については、この特例の適用を受けることはできません。

 

 

 

猶予税額及び納付税額の計算

相続人等の納税猶予分の相続税額及び納付税額の計算は以下のとおりです。

持分を取得した相続人の納付税額 = 通常の相続税額 ー 猶予税額

※通常の相続税額:通常の相続税額の計算を行い、持分を取得した相続人等の相続税額を算出した金額。

※猶予税額:持分を取得した相続人等以外の者の取得財産は不変とした上で、その相続人等が持分のみを相続したものとして相続税額の計算を行い、その相続人等の相続税額を算出した金額。

 

特例を受けるための要件

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書を期限内に提出するとともに医療法人持分納税猶予税額及び利子税の学に見合う担保(この特例の適用を受ける認定医療人の持分でなくても差し支えありません。)を提供する必要があります。

要件 説明
被相続人 医療法人の持分を有していた人であること。
相続人等 被相続人から相続又は遺贈により医療法人の持分を取得した人であること。
医療法人の持分 相続税の申告期限において認定医療法人の持分であって、相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載したものであること。
※遺産分割されたものに限ります。

 

 

 

 

特例の適用とならない場合

次のいずれかに該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。

  • 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、医療法人の持分に基づき出資額に応じ
    た払戻しを受けた場合
  • 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、医療法人の持分を譲渡した場合
  • 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、認定医療法人の持分の全部又は一部を放棄し、医療法人の持分についての税額控除の適用を受ける場合

 

納税猶予が打ち切られる場合

納税猶予が打ち切られた場合は、期限までに、猶予された税額と利子税を支払わなければなりません。

利子税の納付

この特例の適用を受ける相続人等は、納税猶予の打ち切りがあり、猶予税額を納付する場合には、その納付する相続税額を基礎とし、相続税の申告書の提出期限の翌日から納税の猶予に係る期限までの期間に応じ、年6.6パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税を、併せて納付しなければなりません。

 

納税猶予税額の全部確定

この特例の適用を受ける相続人等又は認定医療法人は、次のいずれかに該当する場合は、それぞれに掲げる日から2ヶ月後が納税の猶予期限となります。

  • 相続人等が相続税の申告書の提出期限から認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までの間に認定医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合に、その払戻しを受けた日
  • 相続人等が相続税の申告書の提出期限から認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までの間に認定医療法人の持分の譲渡をした場合に、その譲渡をした日
  • 移行期限までに新医療法人への移行をしなかった場合に、その移行期限
  • 認定移行計画の認定が取り消された場合に、その取り消された日
  • 認定医療法人が解散をした場合(合併により消滅をする場合を除く。)に、その解散をした日
  • 認定医療法人が合併により消滅した場合に、その消滅した日

なお、次の場合には、納税猶予は継続されます。

  • 合併により医療法人を設立する場合において相続人等が持分に代わる金銭その他の財産の交付を受けないとき
  • 合併後存続する医療法人がその合併により新医療法人となる場合において受贈者が持分に代わる金銭その他の財産の交付を受けないとき

 

納税猶予税額の一部確定

認定医療法人が基金拠出型医療法人への移行をする場合で、相続人等が有する持分の一部を放棄し、その残余の部分を基金として拠出したときは、その基金として拠出した額に対応する部分の金額の相続税については、医療法人への移行に関する都道府県知事の認可があった日から2ヶ月後が納税の猶予期限となります。

 

納税猶予税額の免除

移行期間(最長5年)内に、相続人が持分の払戻や譲渡を行うことなく、その持分の放棄を行ったとき、猶予されていた納税額が免除されます。

  • この特例の適用を受ける相続人等が有しているこの特例の適用に係る認定医療法人の持分の全てを放棄した場合に納税猶予分の相続税額が免除されます。
  • 認定医療法人が基金拠出型医療法人への移行をする場合、相続人等が持分の一部を放棄し、その残余の部分を基金として拠出したとき、納税猶予分の相続税額から基金として拠出した額に対応する部分の金額に相当する相続税額を控除した残額が免除されます。

なお、本内容に該当する場合には、書類を添付した届出書を、その該当することとなった日後遅滞なく、相続税の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 

 

 

 

医療法人に対するその他の相続税対策

出資持分評価額の引き下げ

医療法人の規模や状態によって効果は異なってきますが、次のような方法で出資持分評価を下げ、相続税の節税につなげることができます。

ただし、蓄積された利益を下げることで、医院経営を悪化させてしまっては本末転倒なので計画的に対策する必要があります。

 

役員退職金の支給

出資持分評価の引き下げの一般的な方法が理事長や他役員への退職金の支給です。

退職金を支払うことで、医療法人内の蓄積された利益を減らすだけでなく、所得税でも大幅に優遇されます。

退職金は基本的に法人の損金として参入できますが、損金算入が無制限に認められているわけではありません。法人税上の役員退職給与の適正額でなければ損金不算入となってしまいます。

退職金規程などを整備し、その規程にしたがって退職金の支給を行いましょう。

医療法人の役員が退職する際は、「退職慰労金」「特別功労金」,死亡した際は「死亡退職金」「弔慰金」といった名目で支給することができます。
いずれの退職金も全額損金算入される退職金の額には目安があります。

【退職慰労金・死亡退職金】
最終の月額報酬×役員としての在任年数×功績倍率(1~3倍)

【特別功労金】
特別功労金は,特に功績が顕著と認められる役員に対して支払われ,死亡退職金の30%までを上限に支払われるのが目安です。

【弔慰金】
次の範囲内であれば、相続税非課税となります。
業務上の死亡の場合:最終報酬月額×36カ月
業務外の死亡の場合:最終報酬月額×6カ月

 

役員報酬を与える、スタッフの給料を上げる

人件費も基本的には全額損金にできますから、役員報酬を与えたり、スタッフの給料を上げたりすることも有効です。決算賞与などを検討することも有効です。

ただし、役員報酬を損金として算入するには、医療法人の場合は原則として次のいずれかの要件を満たすことが必要です。

【定期同額給与】
「支給時期が1カ月以下の一定期間ごと」かつ「各支給時期における支給額が原則的に同額」。つまり、役員報酬が毎月同額であるということです。

また、事業年度内に定期給与の額が改訂された場合や経営状況の著しい悪化により減額があった場合でも、要件に該当すれば損金算入が認められます。

【事前確定届出給与】
役員給与の支給時期や金額をあらかじめ定め、事前に税務署に届出をすることにより損金算入できることになります。

 

設備投資を行う

将来後継者にクリニックを承継してもよいように、クリニックの建て替えや医療機器の購入等の内外装をリニューアルすることも有効です。

大規模な設備投資を行うと、純資産の減少が見込め、相続税対策になります。承継者の意向に合えば検討してみる価値があります。

 

事業規模の拡大

事業規模を拡大することで、出資持分評価時の医療法人の規模を拡大させ、相続税評価額の減少が見込めます。

但し、安易な事業規模の拡大は、赤字経営を招く恐れもあるので、十分注意しながら行いましょう。

 

 

 

 

メディカル・サービス法人(MS法人)化

MS法人はメディカル・サービス法人の略で、法令上の医療機関でなくてもできて、かつ病院運営にかかわる事業を行う法人のことをいいます。

MS法人自体は法律で定められたものではなく、一般的な法人(株式会社や合同会社)と同じものです。

法人として病院を開設したり施設を運営したりする場合は医療法人として法人登録をする必要がありますが、医療法人だと医療法でさまざまな規制を受けたり、新たに設立する場合は財産権を持つことができなかったりと、色々な制約がかかってしまいます。

特に大きなのが、医療法人の大原則となる非営利性の担保です

医療法人では普通の法人のような営利目的での事業が禁止されているので、一般業務と医療業務を分離して、一般業務については、外部委託することにより、医療法人のデメリットを回避するという方法です。

このように事業分散、事業拡大を目的に設立される一般法人がMS法人(メディカル・サービス法人)です。

 

MS法人の活用

MS法人による不動産賃貸、業務外注化により、医療法人本体の出資持分の評価を引き下げることが可能です。

MS法人は税金対策や業務の効率化などで活用されますが、消費税負担によって資金が流出するデメリットもあります。消費税の増税によってMS法人設立のメリットが低くなることも考えられるので注意して実施する必要があります。

また、MS法人の株主になる場合は、株価に注意しておく必要があります。株価が高額になってから次世代に株を移転すると、高税率の贈与税や相続税がかかってしまいます。

後継者に引き継ぐ場合は、MS法人の株価評価も減らすか,最初から後継者を株主にするという対策が考えられます。

 

 

まとめ

この制度の目的は、出資持分ありの医療法人を出資持分なしの医療法人へ移行することにあります。

医療法人の出資持分をなしにすることにより、次世代の相続税負担が医療法人以外の業種と統一されることになります。

このため、認定医療法人の出資持分を早く放棄するように、税制が組まれています。

もし、出資持分ありの医療法人の場合には、早めに対策を検討して出資持分なしに移行しておくことが賢明です。

以下の記事では、相続に詳しい税理士をご紹介していますので、是非一度ご相談されてみてはいかがでしょうか?

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