2018年頃話題となり、仮想通貨で億り人に成った方も居るかと思います。
最近は、資金決済法(令和2(2020)年5月1日施行)の改正により、「仮想通貨」は「暗号資産」へと呼称が改められました。
※本記事では「仮想通貨」という呼び方に統一しています。
仮想通貨とはどの様なもの
昨今、ネットバンキングやネット証券など、インターネット取り引きによる「デジタル遺産」も増えてきました。仮想通貨も、その「デジタル遺産」の一つです。
「仮想通貨」とは、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
- 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
- 電子的に記録され、移転できる
- 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
代表的なものには、ビットコインやイーサリアム、リップルなどがあります。
仮想通貨は相続税の対象となるのか?
結論から言うと、仮想通貨は相続財産として扱われます。
そして基本的には相続開始日の売却価格が仮想通貨の相続税評価額となります。
仮想通貨は、、他の相続財産同様、適切な相続税評価額を計算して相続税申告を行なう必要があります。
もし仮想通貨を計上し忘れたり、計上額が過少であったりすると、後になって税務調査で指摘を受けたり、追徴課税となって余計なお金を支払う羽目になることもあります。
仮想通貨を相続するにはどうすれば良いのか?
仮想通貨の相続税について考える前に、暗号資産をどうやって相続するかを考えなくてはなりません。
仮想通貨自体は、実態がある訳ではなく、デジタル情報であるため、「通帳を見れば残高がわかる」というものではありません。
また、仮想通貨自体は色々な独自通貨価値を持っている為、先ず、被相続人が保有していた仮想通貨の種類や数量が何なのかを見極める必要があります。
相続人が日頃、仮想通貨を扱い慣れていれば良いのですがそうでない場合には、かなりの難事です。
被相続人が生前に使っていた取引所や手持ちの仮想通貨の残高をメモしていれば良いのですが、そうでなければ、被相続人が日常使用していたPCやスマートフォンをチェックして、仮想通貨の取引に関わっていたかどうかを確かめる必要があります。
また、仮想通貨は、ハードウエアウォレットという、USBの様な形をした財布に格納している場合もあるため、その内容をチェックする必要があります。
もし、仮想通貨の扱いに慣れていない場合には、知り合いに仮想通貨を運用している方が居ないかを確認することをお勧めします。
なぜかと言いますと、仮想通貨は電子情報であり、誤った操作をしてしまうと、保持していた通貨自体を消してしまったり、仮想通貨をロックしてしまい二度と取り出せない状況になることがあります。
更に、仮想通貨の世界では詐欺も多く存在しており、被相続人が取引していた取引所が閉鎖されていたり、価格が大幅に下落しており数百円の価値しかないということもありえます。
仮想通貨でもビットコインやイーサリアムというメジャーなコインであれば何とか相続することは可能ですが、メジャーでないアルトコインの場合には、取引所の限られており、価値が殆ど無いコインも多数存在しています。
被相続人が仮想通貨を行っていると解ったら、先ず、コインの種類と数量、取引所又はウォレット(財布の事)を特定することから初めて下さい。
仮想通貨取引所とは
仮想通貨取引所は日本国内以外に海外に存在する場合もあります。
国内の仮想通貨取引所としては以下の様な所が有名です。
- CoinCheck(コインチェック)
- DMM Bitcoin(DMMビットコイン)
- bitFlyer(ビットフライヤー)
- GMOコイン
- Zaif(ザイフ)
- bitbank(ビットバンク)
しかしながら、被相続人が国内の仮想通貨取引所を使用していたとは限りません。
むしろ海外の取引所を利用している方の方が多いのが実情です。
取引所が海外であり、且つ、ビットコインやイーサリアム、リップル等のメジャーな仮想通貨でなかった場合には、探し出すのが粗不可能となります。
その場合には、無理やり探し出して相続財産に含めずに諦めるしかないでしょう。
仮想通貨は、通貨(円や$等)に変換して初めて通貨としての価値が発生します。このため、通貨に変換できないということは、資産にもならないということです。
仮想通貨取の取引所を特定することができれば、ようやく次のステップに進むことができます。
仮想通貨取引所へ連絡
仮想通貨取引所が判明した場合には、仮想通貨の取引所に仮想通貨を相続したことを連絡しましょう。なお、手続きは法定相続人が行うことになっています。
仮想通貨取引所から確認内容が届く
口座の持ち主や相続について連絡した相続人ご本人の確認作業に関する内容が届きます。通常はメールで送られてきます。また、残高証明書が郵送されてくる場合もあります。
仮想通貨取引所が口座を凍結
確認作業が済んだ時点で口座が凍結されます。
仮想通貨取引所から必要書類が通知
相続手続きに必要な書類を知らせてくれます。
通常は、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍・法定相続情報一覧図のいずれか (原本)、代表相続人の本人確認書類(コピー可)、遺言書がない場合は共同相続人同意書・相続人全員の印鑑証明書・遺産分割協議書、暗号資産(仮想通貨)売却依頼書・決済依頼書・出金依頼書・口座抹消依頼書などとなります。
仮想通貨取引所へ必要書類を送付
書類を相続人の代表者が仮想通貨取引所へ送付します。
仮想通貨取引所から口座への送金
暗号資産交換業者が受け取った書類内容を確認後、仮想通貨を日本円に換算して代表者の口座に送金します。仮想通貨そのものを承継するのではなく、時価で換算し、日本円で相続することになっています。
パスワード(暗証番号)がわからない場合
口座が国内の仮想取引所にある場合は、被相続人(亡くなった方)のIDやパスワードがわからなくても慌てることはありません。法定相続人としての手続きをきちんと踏めば、仮想通貨取引所は方法をアドバイスしてくれます。
問題は、海外の仮想通貨取引所に口座があった場合です。海外取引所はプライベートキー(秘密鍵)が必要な場合もありますし、外国語を駆使しながらの相続手続きは、相続人にとってかなりの負担となります。
日頃から家族間で、手掛かりとなるような会話が交わされているかどうかがポイントとなります。
誰しも自分が死亡する時は予測できませんが、「そろそろ相続について考えよう」となったら、仮想通貨は国内の取引所や販売所に移したほうが無難かもしれません。
相続人のためを思うなら、現金化して生前贈与するという方法も検討した方が正解です。
仮想通貨の相続税評価方法
日本円で仮想通貨の取引を行っていた場合には、通常、仮想通貨は日本円に換算して支払われますので、相続税も日本円に換算して評価します。
仮想通貨取引所が換算した金額ではなく、相続開始日(被相続人が亡くなったことを知った日)の時価で評価します。
また、日本円での換算時に利益が出ていれば、所得税の確定申告も必要です。分類は雑所得となります。
もし、被相続人が亡くなるまでの年に仮想通貨を売買したり、交換したり、あるいは仮想通貨で何かを購入していたら、準確定申告が必要な場合もあります。
仮想通貨の相続税評価額の決め方
仮想通貨の相続税評価額は「活発な市場が存在する場合」と「活発な市場が存在しない場合」で評価方法が異なります。
「活発な市場が存在しない」場合とは、取引所や販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われておらず、継続的に価格情報が提供されていない場合をいいます。
具体的には次のような場合が活発な市場が存在しない場合に該当すると思われます。
- ICO(新規仮想通貨公開)で新規発行された仮想通貨の場合
- 複数の取引所で取り扱いがない場合(1つの取引所でしか取引できない場合)
「活発な市場が存在する」場合の相続税評価方法
「活発な市場が存在する」仮想通貨は、次のいずれかの方法によって評価します。
- 仮想通貨取引所が発行する相続開始日の残高証明書の金額を相続税評価額とする方法
実際に相続税申告をする場合には、「相続開始日の残高」と同日の「日本円への換算レート」を記載した残高証明書を取引所に発行してもらい、これを相続税評価額とする方法 - 仮想通貨取引所が公表している相続開始日の売却価格を相続税評価額とする方法
仮想通貨取引所が売却価格を公表していれば、その売却価格を相続税評価額とすることができます。※ただし、納税義務者が複数の取引所に同一の仮想通貨を持っている場合には、その納税者義務者の選択した取引所の公表する「相続開始日における取引価格」を選択できます。
※残高証明書がある場合でも取引所が公表している価格を使って問題ありません。
活発な市場が存在しない場合の相続税評価方法
活発な市場が存在しない仮想通貨の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないため、その仮想通貨の内容や性質、取引実態等を勘案し個別に評価します。
例えば、売買実例価額、精通者意見価格等を参考にして評価する方法が考えられます。
仮想通貨の相続税申告書の記載例
仮想通貨も他の財産と同じように相続税申告書に記載します。
具体的には残高証明書の金額を相続税申告書の第11表に下図のように記載します。
- 細目欄は「暗号資産」とする
- 通貨名、仮想通貨取引所名、数量、単価、価格(残高証明書の金額等)を記載
<相続税申告書 第11表>
暗号資産の相続で事前にしておきたいこと
仮想通貨の相続に関しては、相続税以外にも事前にしておくことがあります。
自分にもしものことが起こった場合に備えて、配偶者や子供、あるいは親に暗号資産を扱っていることを知らせておき、またそのときに慌てずに済むよう、操作方法等を記載したメモを作成しておくと良いでしょう。
また、仮想通貨の相続について、どこに何を問い合わせ、どのような手続きをすればいいか等の注意点を書き残しておくのも一つの方法です。
例えば、日頃からあなたが使っている取引所名や保有している暗号資産、ID、パスワードを書きしるしておいて、銀行の貸金庫に入れておくなどする方法もあります。
また、死ぬ間際が予想が付いた場合には、暗号資産自体を日本円に換金して生前贈与をしておくことも検討してみてはいかがでしょうか?
贈与は、年間110万円までは非課税となるので、この枠をうまく使えば、万一の際の相続額を削っておくことができ、結果として相続税の節税につながります。
まとめ
大きく値上がりしている仮想通貨の申告が漏れると税務署から厳しく追及され、場合によっては追徴課税される可能性があります。
被相続人が仮想通貨を持っていた場合には税申告が漏れないように気をつけましょう。
仮想通貨の相続は、相続税や所得税の納税、確定申告や場合によっては準確定申告もしなければいけないなど、相続人にとっては負担を感じることが多いものです。
また、デジタル遺産は被相続人ご本人でないとわからないことが多いため、厄介に感じる相続人の方も多いようです。
デジタル遺産だからと言って、相続税の申告・納税は待ってくれません。相続税の申告期限は相続開始日の翌日から10ヵ月以内です。迷ったり、悩んだりしたら、抱え込まず、相続税に詳しい税理士に相談されることをおすすめします。
以下の記事では、相続に詳しい税理士をご紹介しています。
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