しかも期限が設定されているものがほとんどなので、注意が必要です。
知らずに期限を過ぎるとできなくなってしまう手続きもありますし、ペナルティーが科される可能性もあります。
今回は、相続において必要な手続きを時系列でまとめました。相続人の立場になり、これから各種の手続きを進めていかなければならない方は参考にしてください。
【7日以内】死亡届、火葬許可申請書を役所に提出
家族が亡くなるととても悲しいものですよね。
しかしながら、悲しんでばかりは居られません。
- 病院又は警察に連絡して「死亡診断書」を入手
- 家族や知り合いへの連絡
- 死亡届の役所への提出
- 火葬許可証の申請
- 葬儀の準備
- 墓の手配
- 資産の洗い出し
など、やらなければならないことが山程あります。
自宅でご家族が亡くなった場合、最初にやるべきことは「死亡診断書」を受け取ることです。死亡診断書がないと、火葬や納骨などの手続きができません。病院であれば臨終時に立ち会った医師に書いてもらえますが、自宅で死亡した際には医師に来てもらわなければならないため、その分手間がかかります。
病院でお亡くなりになった場合
現在、お亡くなりになる方の8割近くが病院で亡くなっています。
病院で死亡が確認されると、医師により死亡の宣告があり、その後死亡診断書が作成されます。
その後、病院を出て自宅、または葬儀会館など安置施設まで、故人を搬送し、通夜、葬儀・告別式の準備を行います。
ここまでの流れを大まかにいうと、エンゼルケア(遺体のケア) → 搬送 → 安置 → 納棺といった流れになります。
臨終後、病室で行うこと
病院では臨終の後、医師が死亡診断書を用意し、看護師やスタッフが遺体の処置を行います。
遺族は故人の安置先を決定し、病院から搬送しなければなりません。
病院にもよりますが、臨終後にはなるべく早く病院を出るように言われることも多いです。
葬儀社がすでに決まっている場合はよいですが、亡くなってから葬儀社を探す場合、ごく限られた時間の中で決定しなければなりません。
身内への連絡
死期が近づいたら、身内をはじめ最後に会わせたい方々に連絡をします。危篤の状態から何度か持ち直すこともあります。
医師に臨終と判断された場合には、近しい人々に訃報を入れます。葬儀の日取りや場所などが決まっていない段階であっても、亡くなったという事実を伝えます。
末期の水
別名「死に水」とも言われ、その場にいる一人ひとりが亡くなる人を送りだす在来仏教の儀礼です。かつては息を引き取る直前に行っていましたが、ご臨終の直後に行うことが多くなりました。
末期の水には、茶碗、水、新しいガーゼや脱脂綿、割り箸を用意します。
茶碗に水を入れ、新しいガーゼや脱脂綿を割り箸に挟み、茶碗の水を含ませて故人の唇を潤します。
これを故人との血縁関係の近い方から一人ずつ、その場にいる全員が行います。ガーゼや割り箸の替わりに新しい筆を使ってもかまいません。
宗派によっては末期の水をしないので、その場合は病院のスタッフに伝えます。
エンゼルケア
エンゼルケアとは、遺体に施す身繕いや死化粧のことです。
故人の最期にふさわしい姿にするために体を清めます。闘病の跡や傷口などをカバーしたり、化粧をしたり、生前の姿へと近づけます。故人の尊厳を守ることはもちろん、残された家族の心のケアという意味合いもあります。
かつては病院でのエンゼルケアは看護師などが死後処置の一環として簡単なものを行うだけというイメージでしたが、最近ではエンゼルケアを丁寧に行う病院も増えているようです。
自宅でお亡くなりになった場合
もしもご家族が自宅で死亡した場合、病院で亡くなるのとは異なるプロセスを踏むことになります。
まずどこに連絡をして、何を行ったらいいのでしょうか。
一番最初に行うこと
最初に、お亡くなりになったことを脈や息で確認します。
このとき、亡くなった方を動かしてはいけません。
例えば、お風呂場で裸の状態で亡くなっていたとしても、警察が来る前に服を着せてはいけません。
身内であっても勝手に遺体を動かすと、警察から事情を聴取されることになります。死体検案書が作成されるまでは、触りたくなる気持ちをぐっとこらえましょう。
また、あわてて救急車を呼ばないようにして下さい。
ご家族が自宅で亡くなった場合、どこに連絡すればいいのかわからなくて、つい救急車に連絡してしまう場合もあるかも知れません。
蘇生する可能性があれば、救急車に連絡して病院へ搬送してもらうことも可能です。
しかし、明らかに死亡している状態では、救急隊員は警察を呼んですぐに帰ってしまいます。
基本的に救急車は遺体搬送をできないので救急車を呼んだら、警察が来ることになります。
死亡診断書(死体検案書)の受取
大切な方を失うことはとても悲しいことですが、遺族は限られた時間の中でいろいろな手続きをしなくてはなりません。
最初にやるべきことは「死亡診断書」を受け取ることです。
死亡診断書がないと、火葬や納骨などの手続きができません。
自宅で死亡した際には医師に来てもらわなければならないため、その分手間がかかります。
かかりつけ医がいる場合
病院もしくは在宅医療で継続的に病気を診てもらっている場合は、まずはかかりつけ医に連絡しましょう。
故人がその担当医から24時間以内に診察・治療を受けており、持病によって亡くなったのであれば、臨終に立ち会わなくても死亡診断書を交付してもらえます。
たとえ生前の診察後24時間以上を経過していたとしても、担当医が自宅に来てくれて持病による死亡で間違いないと確認できたら、死亡診断書が発行されます。
かかりつけ医がいない場合
かかりつけの医療機関がない場合、死亡診断書を発行できません。
したがって、死亡診断書と同じ内容の「死体検案書」を交付できる、警察署に連絡することになります。
警察が来るとまず事件性が疑われて、遺族に対する事情聴取と現場検証が行われます。
監察医や検察官が検視をして特に事件性がないと判断されれば、すぐに死体検案書を発行してもらえます。
死亡届の提出(7日以内)
死亡届と死亡診断書はセットになっているので、死亡届の部分に必要事項を記入して市町村役場へ持参しましょう。
役所の担当課で死亡届を提出すると、戸籍を書き換えてもらえます。必ず死亡後7日以内に済ませて下さい。
7日以内に死亡届を提出しない場合は、戸籍法によって3万円以下の過料を徴収されるので注意しましょう。
故人の死亡地または本籍地、届出人の所在地のいずれかの市区町村役場へ提出します。届け人は親族や同居人のほか、葬儀社など代理人でも構いません。
死亡届は火葬(または埋葬)許可証を受け取るために、期限までにきちんと出す必要があります。
火葬・埋葬の許可申請
火葬や埋葬をするためには、それぞれの許可申請書を提出する必要があります。
同じく7日以内に提出しなければならないので、死亡届の提出と同時に手続きを行いましょう。
無事に申請が終われば、火葬許可証が交付されます。
これがあれば火葬できるので、葬儀会社などと相談してお通夜や葬儀、火葬を済ませましょう。
葬儀の手配
急なことであっても、葬儀社を手配し葬儀を依頼する必要があります。自宅での看取りを考えているのであれば、早い段階で葬儀社の候補を決めておくことをおすすめします。
親族への連絡
まず、血縁関係の近い親族に連絡します。遠方の親族には通夜、葬儀・告別式の日程が決まってから連絡を入れるようにしましょう。
【14日以内】年金受給停止、健康保険資格喪失や世帯主の名義変更
年金の受給停止
被相続人が年金を受け取っていた場合、受給停止をしなければなりません。
国民年金は死亡後14日以内、厚生年金は死亡後10日以内に年金事務所へ報告しましょう。
「受給権者死亡届」を提出すれば年金を止めてもらえます。もしも死亡を報告せずに年金を受け取ってしまったら、後で返還しなければなりません。「不正受給」とされる可能性もあるので、早めに書類を提出しましょう。
健康保険の資格喪失
健康保険や介護保険も資格喪失の手続きが必要です。
国民健康保険は市町村役場、社会保険は加入している健康保険組合に連絡して書類を提出しましょう。
また社会保険の被保険者が死亡すると、扶養されていた人は健康保険組合から「埋葬料」というお金をもらえます。忘れずに申請しましょう。
世帯主の変更
被相続人が住民票上の「世帯主」だった場合、役所で世帯主の変更届を出しましょう。
公共料金の名義変更
被相続人が公共料金の契約者だった場合、電力会社やガス会社へ連絡して名義変更しましょう。
電話で対応してもらえるケースが多数です。期限は特にありません。
【3カ月以内】相続放棄、限定承認、遺言書の調査や遺産分割の準備
相続放棄をする場合
遺産を相続したくない場合は「相続放棄」しなければなりません。
資産は相続したいけれど負債は相続したくない場合「限定承認」をすればマイナスの相続を避けられます。
まずプラスの財産を確定させるので、マイナスの財産のほうが少なければ手元に遺産が残ります。
マイナスの財産のほうが多い場合は、プラスの財産を限度としてマイナスの財産を相続するので、プラスマイナスゼロになる、というわけです。
これらの手続きをするには、相続開始後3カ月以内に家庭裁判所で「相続放棄(限定承認)の申述」をしなければなりません。3カ月を過ぎると借金を相続せざるを得なくなる可能性があるので、できるだけ早めに手続きをしましょう。
限定承認の場合、相続人が全員揃って手続きしないといけないので、相続放棄より手間がかかります。早めに準備して協力しながら家庭裁判所へ申述書と必要書類を提出してください。
遺言書の調査と検認
相続人の立場になったら、早めに遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書があると遺言内容に従って遺産相続する必要があるからです。
自筆証書遺言なら自宅で保管されているか法務局に預けられているケースが多数です。公正証書遺言は公証役場で保管されているので、検索して調べてみてください。
自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかったら、家庭裁判所で検認を受けましょう。
検認に期限はありませんが、検認を受けずに遺言書を開封するのは違法です。
相続人調査、相続財産の調査
遺産分割協議に備えて相続人調査と相続財産調査をしましょう。
相続人調査の際には、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)」と「相続人全員の現在の戸籍謄本」を取得する必要があります。
また、金融機関への提出等で「原戸籍」が必要となる場合があるため、一緒に取得しておきましょう。
【原戸籍は、以下の調査で必要となる】
- 相続人の確定
- 不動産所有権移転登記(相続登記)
- 銀行預金口座の名義変更または解約
- 有価証券(株式)の名義変更
財産を把握するには、金融機関へ問い合わせて「残高証明書」を取得したり証券会社へ取引内容を照会したり、不動産・車などの各種資料を集めたりする地道な作業が必要です。
相続人調査、相続財産調査に期限はありませんが、これらが終わらないと遺産分割協議を始められません。相続放棄するかどうかの判断にもかかわるので、早めに調べましょう。
【4カ月以内】亡くなった人の準確定申告
被相続人が事業を営んでいた場合などには、相続人が「準確定申告」をしなければなりません。準確定申告とは、相続人が被相続人に代わって行う確定申告です。
下記の場合、準確定申告をする必要があります。
- 被相続人が事業者であった
- 被相続人が2000万円を超える給与所得者であった
- 医療費の還付などを受けたい
準確定申告の期限は「相続開始を知ってから4カ月以内」なので、急ぎましょう。遅れると延滞税が加算される可能性もあります。
事業に関する資料などを参照して確定申告書を作成し、税務署へ提出すれば手続きが完了します。
【10カ月以内】相続税申告
遺産の額が基礎控除を超えていれば、相続税の申告と納税をしなければなりません。
申告も納税も「相続開始後10カ月以内」が期限です。
過ぎると延滞税がかかったり税務署から督促されたりするので、遅れないようにしましょう。
相続税の申告納税は、遺産分割協議が済んでいなくても行う必要があります。
その場合、とりあえず「法定相続分」によって申告を済ませ、後に遺産分割協議ができたときに「更正請求」を行って払いすぎた分の還付を受けたり、修正申告して不足分を支払ったりします。
遺産分割協議書の作成と相続手続き
遺産分割協議には期限がありません。ただし相続税の申告と納税の期限もあるので、できるだけ相続開始後10カ月以内に終えるのが良いでしょう。
相続人が話し合って合意できたら遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺産分割協議書ができあがったら、それを使って不動産や株式の名義変更、預貯金の払い戻しなどの手続きを進めてください。
【1年以内】遺留分侵害額請求
不公平な遺言書がのこされていたり贈与が行われたりして相続人の「遺留分」を侵害されたら、侵害された相続人は「遺留分侵害額請求」によってお金を取り戻せます。
遺留分侵害額請求は「相続開始と遺留分侵害の事実を知ってから1年以内」に行わなければなりません。不公平な遺言書や生前贈与の事実を知り、遺留分を返還してほしいなら早めに対応しましょう。
請求時には「内容証明郵便」で「遺留分侵害額請求書」を作成して遺留分の侵害者(遺贈や贈与を受けた人)へ送付しましょう。
【3年以内】生命保険の死亡保険金
被相続人が生命保険に加入していた場合、残された人は死亡保険金を受け取れる可能性があります。
死亡保険金の請求期限は「死亡後3年以内」となっていて、期限を過ぎると高額な保険金であっても一切受け取れなくなります。
被保険者が死亡したら、早めに生命保険会社へ連絡を入れて保険金の請求をしましょう。
まとめ
家族がお亡くなりになると非常に悲しいものです。
しかし、いつ迄も悲しんでばかりも居られません。
お亡くなりになった人の冥福を祈りながら、残して頂いた財産をしっかり守っていかなければなりません。
葬儀の手配、親族への連絡、遺産分割協議等を進めていくために、この記事が参考になれば幸いです。
もし、手続き等で不安に感じたら、以下の相続相談を利用するのも方法の一つです。是非ご利用頂ければと思います。
以下の記事では、相続税申告が得意な税理士をご紹介していますので、是非ご参考にして下さい。
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