人から人へ財産を渡した場合には、贈与と扱われ贈与税が掛かります。
しかしながら、中には、贈与税として扱われない対象や非課税となる対象が存在しています。
贈与税が掛からない対象とはどの様な財産でしょうか?
今回は贈与税が非課税となる対象について詳しく解説してみたいと思います。
贈与税が非課税になる財産
贈与税が非課税になる4つの贈与特例以外にも、贈与税が非課税となる場合がありますので、以下で紹介します。
特定障害者等に対する非課税の特例【特定贈与信託】
特定障害者等の方の生活費や医療費にあてるために、親族などが信託銀行に財産を信託すると、信託銀行は財産を管理するとともに、特定障害者の方に信託財産から定期的金銭を交付します。
この制度を特定贈与信託といいますが、特定贈与信託を使って贈与する財産は、一定の金額まで贈与税が非課税です。
特定障害者は、
- 特別障害者
- 特別障害者以外の障害者のうち精神に障害がある方
の2つに分けられ、非課税枠はそれぞれ異なります。
特別障害者の場合:最大6,000万円まで非課税
障害者のうち、特に重度の障害のある方を「特別障害者」といい、最大6,000万円までの贈与が非課税となります。
具体的には、以下にあてはまる方が「特別障害者」に該当します。
- 身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級又は二級と記載されている方
- 精神障害者保健福祉手帳に障害等級が一級と記載されている方
- 重度の知的障害者と判定された方
- いつも病床にいて、複雑な介護を受けなければならない方 など
特別障害者以外の特定障害者の場合:最大3,000万円まで非課税
特別障害者以外の特定障害者の方とは以下にあてはまる方のことです。
特別障害者以外の特定障害者の場合、最大3,000万円までの贈与が非課税となります。
- 中軽度の知的障害者
- 精神障害者保険福祉手帳の障害等級が2級または3級の精神障害者
扶養義務者からの通常の生活費
国税庁によると、『夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの』については贈与税がかからないとされています。
通常必要と認められるものとは、
- 食費や住居費、交通費、衣類関係のお金など、日々の生活にかかるお金
- 要介護状態となった親の介護施設入所費用や毎月の費用
- 病院に支払う入通院費用などのお金
などです。
このため、扶養義務者からもらう贈与については、贈与税が掛かりません。
同居しているか別居状態かは関係ありません。
以下で詳しく説明します。
親族間の扶養義務
配偶者、直系血族や兄弟姉妹、生計を一にしている3親等内の親族は互いに扶養義務を負います。
※3親等内の親族には、以下のような人が含まれます。
父母、祖父母、曾祖父母、子ども、孫、兄弟姉妹、配偶者、甥姪、叔父叔母、配偶者の父母、祖父母、曾祖父母、配偶者の兄弟姉妹や甥姪、配偶者の叔父叔母など
扶養義務者からもらう治療費などは非課税
通常の生活費とは、日常生活に必要となる治療費、養育費などです。
夫婦や親子などの扶養義務者からこれらの費用をもらい受けた場合の贈与税は非課税です。
扶養義務者からもらう学費
通常の教育費とは、学費や教材費、文具費などです。
扶養義務者からこれらの費用を贈与された場合は非課税です。
生活費の仕送り
法律上の扶養義務にもとづいて生活費の送金をするときには、それが通常必要とされるものである限り贈与税がかかりません。
子どもの養育費
親が離れて暮らす未成年の子どもの養育のために負担すべき費用です。
夫婦の婚姻費用
夫婦が相互扶助義務にもとづいて請求できる生活費です。別居している場合はもちろんのこと、同居していても婚姻費用を請求できます。
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金
1口あたり毎月20,000円の終身年金が非課税
地方公共団体が条例に基づき実施している心身障害者扶養共済制度では、障害のある方を扶養している保護者が、毎月、一定の掛金を納めることにより、保護者が亡くなったときまたは重度障害になったときに、障害のある方に終身年金を給付します。
給付金額は、加入口数1口あたり毎月20,000円で2口まで加入できますが、いずれも贈与税は非課税です。
なお、心身障害者扶養共済制度における障害のある方の範囲は、次のいずれかに該当する障害のある方で、将来独立自活することが困難であると認められる方です。(年齢は問いません。)
- 知的障害
- 身体障害者手帳を所持し、その障害が1級から3級までに該当する障害
- 精神または身体に永続的な障害のある方(精神病、脳性麻痺、進行性筋萎縮症、自閉症、血友病など)で、その障害の程度が1または2の者と同程度と認められる方
参考:独立行政法人福祉医療機構 しょうがい共済制度のごあんない
祝儀・香典等の冠婚葬祭に関する金銭
扶養義務者以外の人からお金を受け取ると、基本的には贈与税がかかります。
ただし以下のようなものは非課税となっているので、贈与税申告の必要はありません。
- 入学祝い、結婚祝い、出産祝いなどのお祝儀
- お見舞い金、香典などの弔慰金
社会通念上、相当と認められる範囲は非課税
香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどの金品は、一般的な社交をするうえで必要と認められる範囲について贈与税が非課税です。
まとめ
通常は、人から人へ資産が移動する場合には、必ず贈与税が掛かりますが、特殊なケースの場合には贈与税が掛からない場合があることを紹介しました。
生活費など普段あまり気にしていない内容も含まれていますが、厳密には今回説明した様な内容となります。
逆に、贈与税が掛からないと思っているものでも以下の記事の様に贈与税が掛かるものがあるので注意が必要です。
贈与税が掛かるか掛からないか迷った時には、税理士に相談するのが良いでしょう。
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