「税率が高い」というイメージの強い贈与税ですが、実際にはいくかかかるのか気になりますよね。
どんな場合に贈与税がかかって、いくらかかるのか、意外とわからない方が多いのでは無いでしょうか。
今回は贈与税の計算方法について詳しく解説してみたいと思います。
贈与税の理解!計算方法を紹介
以下の記事では、生前贈与をご説明し、扱いが一般贈与と同じである事をご説明しました。
この章では、「贈与」および「贈与税」についてもう少し詳しく説明します。
贈与税ってなに?
はじめは、「贈与税」についてのおさらいです。
贈与税は、個人が他人から財産をもらったとき、もらった人に対して課税される税金です。
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、受贈者(贈与を受けた方)は贈与者(贈与をした方)ごとにそれぞれの課税方法を選択することができます。
贈与税は、個人から贈与によって財産を取得した個人に課税される税であり、相続の関係があるかどうかは関係がありません。
例えば、
- 友人からの贈与
- 親から子への贈与
- 父・祖母から孫への贈与
等があります。
贈与対象は、
- 現金や預金
- 株式
- 不動産
などが対象となります。
なお、生前に贈与することで、「相続税の課税を逃れようとする行為を防ぐ」という役割もあります。
ただし、贈与税の基礎控除は贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとになされます。
特例贈与と一般贈与の違い
贈与税は、贈与をする人(贈与者)と贈与を受ける人(受贈者)の関係及び受贈者の年齢により税率が異なります。
特例贈与
例えば、祖父や祖母、父母などの直系尊属から成人の子(※)への贈与などに使用します。(配偶者の祖父母や配偶者の父母からの贈与等には使用できません)
※贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者に限ります。(令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。)
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 4,500万円以下 | 4,500万円超 |
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ー | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
※出典:国税庁ホームページ
一般贈与
特例贈与に該当しない贈与は一般贈与になります。
例えば、兄弟姉妹間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円超 |
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ー | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
※出典:国税庁ホームページ
贈与税対象金額の計算方法
贈与税は、受贈者(もらう人)が対象の税金で、以下で算出されます。
贈与税対象金額 = 1年間に貰った財産の合計額 ー 基礎控除額(110万円)
※1年間とは、1月1日から12月31日までの間で計算します。贈与税額=贈与税対象金額 x 税率 ー 控除額
尚、贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間で基礎控除額の110万円以内の価額の贈与であれば税金が課されません。
※贈与税の申告の申告も必要ありません。
複数の人からもらっても、1年間でもらった金額全ての合計金額となります。
同じ年に祖父から100万円、祖母から100万円の贈与を受けた場合には、
(100万円+100万円)-110万円=90万円
となり、90万円に対して贈与税がかかることになります。
一般贈与+特例贈与
1年間で一般贈与と特例贈与を相続した場合には、以下の式で計算します。
次の1及び2の合計額(1+2=税額)
一般贈与財産に対応する金額 : a × (A/C)・・・1
特例贈与財産に対応する金額 : b × (B/C)・・・2A:一般贈与財産の価額
B:特例贈与財産の価額
C:合計贈与価額( A + B )
(※A、B及びCは、課税価格の基礎に算入される価額)
a:合計贈与価額Cについて一般税率を適用して計算した金額
b:合計贈与価額Cについて特例税率を適用して計算した金額
贈与税の計算例
贈与税は次の式のように計算されます。
事例で計算する
親から500万円の現金をもらった場合の贈与税を計算してみます。
子どもが未成年の場合(一般贈与)
課税対象額:500万円(贈与財産の合計)-110万円(基礎控除額)=390万円
贈与税:390万円×20%-25万円=53万円(贈与税額)
子どもが成年の場合(特例贈与)
課税対象額:500万円(贈与財産の合計)-110万円(基礎控除額)=390万円
贈与税:390万円×15%-10万円=48.5万円(贈与税額)
成人した子どもが配偶者と自分の両親から贈与を受けた場合(一般贈与+特例贈与)
課税対象額:一般贈与財産が100万円、特例贈与財産が400万円の場合の計算
■一般税率
※すべての贈与財産を「一般贈与財産」として税額計算
(贈与財産の合計)-110万円(基礎控除額)=390万円
贈与税:390万円×20%-25万円=53万円(贈与税額)
■特例税率
※すべての贈与財産を「特例贈与財産」として税額計算
(贈与財産の合計)-110万円(基礎控除額)=390万円
贈与税:390万円×15%-10万円=48.5万円(贈与税額)
■贈与税額
①一般贈与財産の税額
53万円 × 100万円 / (100万円 + 400万円) = 10.6万円
②特例贈与財産の税額
48.5万円 × 400万円 / (100万円 + 400万円) = 38.8万円
贈与税額 = ①一般贈与財産の税額 + ②特例贈与財産の税額
贈与税額:10.6万円 + ②38.8万円 = 49.4万円
贈与を受ける人(受贈者)が成年か未成年で、贈与された額が同じでもでも、贈与税は4.5万円の違いがあります。
贈与税がかからないケース
- 年間110万円以下の贈与の場合
- 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
- 法人からの贈与により取得した財産
贈与税は個人から財産を贈与により取得した場合にかかる税金であり、法人から財産を贈与により取得した場合には贈与税ではなく、給与所得や一時所得として所得税がかかります。
〈贈与税の申告・納税〉
贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までにしなければなりません。
納税については、贈与税額が10万円を超え、かつ、納期限(納付すべき日)までに金銭で納付することを困難とする事由があるときは、申請により、その納付を困難とする金額を限度として、5年以内の年賦で納める延納制度があります。この場合には利子税がかかるほか、原則として担保の提供が必要となります。
注:贈与税については、財産を贈与した方と贈与を受けた方との間で連帯納付の義務があります。
〈手続〉
「特例税率」の適用を受ける場合で、次の1又は2のいずれかに該当するときは、贈与税の申告書とともに、贈与により財産を取得した方の戸籍の謄本又は抄本その他の書類でその方の氏名、生年月日及びその方が贈与者の直系卑属に該当することを証する書類を提出する必要があります。ただし、過去の年分において同じ贈与者からの贈与について「特例税率」の適用を受けるために当該書類を提出している場合には、当該書類を重ねて提出する必要はありません。
1 「特例贈与財産」のみの贈与を受けた場合で、その財産の価額から基礎控除額(110万円)を差し引いた後の課税価格が300万円を超えるとき
2 「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の両方の贈与を受けた場合で、その両方の財産の価額の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた後の課税価格(※)が300万円を超えるとき
※「一般贈与財産」について配偶者控除の特例の適用を受ける場合には、基礎控除額(110万円)と配偶者控除額を差し引いた後の課税価格となります。
まとめ
贈与額がおおきいほど、税率も高くなります。
上記の速算表のとおり、贈与税の一番高い税率は55%にもなり、他の税金に比べるとかなり高いですが、それは贈与額もかなり高額のケースですので、適用になるケースは少ないです。
1年間の贈与を贈与税がかからない110万円までに抑えるのが良さそうですが、そのまま財産を所有した場合に将来課される相続税率によっては、贈与税の方が有利になることもあります。
以下の記事では、相続税対策としての贈与税の詳細をご説明します。
このあたりのシミュレーションは税理士に依頼するのが良いでしょう。
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